一見“拡充”でも、実は恩恵が偏る可能性
2025年のiDeCo改正は、掛金上限の引き上げや加入年齢の延長など、前向きな内容が多く並びます。しかし、制度の全体像を冷静に見てみると、すべての人に平等なメリットがあるわけではないことがわかります。
とくに注目されているのが、「高所得者ほど得をする構造になっていないか?」という点です。
高所得者ほど節税効果が大きい?
iDeCoの最大のメリットのひとつは、掛金が全額所得控除になることです。つまり、所得が高いほど税率も高くなり、結果的に節税効果も大きくなる構造です。
たとえば、年間24万円を拠出した場合、所得税率が5%の人と33%の人とでは、節税額に大きな差が生じます。これにより「結局、税負担の重い人ほど得をするのでは?」という声が出てくるのです。
拠出余力がない人には恩恵が少ない
iDeCoの上限が6.2万円に引き上げられても、それを毎月拠出できる人は限られています。特に子育て世帯や低所得の家庭にとっては、「節税の恩恵を受ける前に、まず生活が大変」という現実があります。
制度そのものが“使える人には有利”であっても、“使いたくても使えない人”には機会そのものが届かない可能性があるのです。
受け取り時の課税にも注意が必要
iDeCoの受け取り時には「退職所得」や「年金所得」として扱われます。一定の非課税枠(退職所得控除・公的年金控除)はありますが、他の退職金や年金と合算されることで、課税されるケースも。
特に今後、退職所得控除に関する見直し(2026年以降の税制改正)も検討されており、「受け取り時に意外と税金がかかる」可能性にも注意が必要です。
企業年金との兼ね合いにも落とし穴が
企業型DCやDB(確定給付企業年金)に加入している場合、iDeCoの拠出枠が制限されるケースがあります。また、「マッチング拠出」を利用している企業では、そもそもiDeCoとの併用ができない場合もあり、自分の職場の制度をきちんと把握しておく必要があります。
制度は「使い方次第」──自分にとってのメリットを見極めよう
制度の拡充=万人にチャンス、とは限りません。大切なのは、自分の収入状況や働き方、家計のライフステージに応じて、“どこまで活用できるか”を見極めることです。
次回(第5回)では、NISAとの違いを整理しながら、どうやってiDeCoを活かし、併用していくべきかを解説していきます。
第1回:なぜ今「自分で年金を作る時代」なのか?
第2回:iDeCoの仕組みとその魅力──なぜ今注目されているのか?
第3回:2025年、iDeCoはここまで変わる!改正ポイントまとめ
第4回:制度は拡充、でも落とし穴も?iDeCo改正の明と暗
第5回:iDeCoとNISA、どう違う?どう使い分ける?
第6回:iDeCoを“人生設計”にどう活かす?実践編まとめ