ソフトバンクGの社債って何?初心者でも分かる仕組みと注目ポイント

はじめに|なぜ今「ソフトバンクGの社債」が話題なのか?

最近、ソフトバンクグループ(SBG)が2025年4月18日に総額6200億円という大型の社債を発行する条件を決定し、注目を集めました。とくに個人向け(リテール)の募集額が6000億円と過去最大規模だったことから、投資初心者の間でも「社債って何?」「なぜ今発行するの?」といった声が聞かれています。

この記事では、そもそも社債とは何か、今回のSBGの狙い、そして投資対象としての社債の見方まで、やさしく解説していきます。


1.社債ってなんだろう?|用語の意味をやさしく解説

社債とは、企業が資金を借りるために発行する「借用書」のようなもの。投資家は企業にお金を貸し、企業は一定期間後に利息をつけて返す仕組みです。

  • リテール債:個人投資家向けの社債。証券会社を通じて私たち一般人も購入できます。
  • ホールセール債:銀行や保険会社、機関投資家などの“プロ”向けに販売される社債。
  • スプレッド:国債の利回りに対してどれくらい「おまけ」が付くかを示す値。リスクが高ければ高いほどスプレッドも大きくなります。
  • 格付け:企業の信用力を示す指標。SBGはJCRによって「A」評価を受けていますが、投資の不確実性から見通しは「ネガティブ」に。

さらに、「トランプ銘柄」という言葉も登場しましたが、これは「トランプ政権との関係性から、米国政策の恩恵を受けやすい企業」のことを指します。SBGは過去にトランプ大統領と良好な関係を築き、米国への巨額投資を発表したことでも知られています。


2.今回のソフトバンクG債のポイントを読み解く

SBGが発行した社債のポイントは次の通りです。

  • 発行総額:6200億円(うち6000億円がリテール向け)
  • 期間と利率:5年満期、リテール債3.34%、ホールセール債3.336%
  • 資金の使い道:償還資金(5000億円)とアーム株取得の未払い分に充当
  • ホールセール債のスプレッド:10年358回国債+2.50%(需要倍率1.1倍)

注目すべきは、個人投資家向けにここまで大規模な起債を行った点です。金融市場が不安定な中、これだけの資金を集められた背景には、SBGに対する根強い期待感があるといえるでしょう。

その要因のひとつが、SBGが打ち出した米AIインフラ構想「スターゲート計画」です。今後4年で5000億ドルを、オープンAIやオラクルと連携して米国でのAIインフラ整備に投資するという大型プロジェクトに対し、マーケットは大きな関心を寄せています。


3.なぜ今、社債を出すのか?|背景にある資金戦略

2025年4月に償還期限を迎える社債5000億円分の借り換えが、今回の起債の大きな理由です。ただ、それだけではありません。

SBGは、AI分野を中心に再び積極的な投資戦略を取り始めています。特にオープンAIへの最大400億ドルの追加出資発表など、リスクを取って成長を目指す方向に大きく舵を切った点は見逃せません。

こうした姿勢に対しては、格付け会社も慎重な目を向けています。JCRは見通しを「安定的」から「ネガティブ」に、S&Pも「格下げの可能性あり」としています。

それでも多くの投資家がSBG債を購入した背景には、「高リスク=高リターン」への期待と、孫会長のブランドへの信頼があると見られます。

また、SBGの財務体質も一定の信頼を支える要因です。たとえば、負債カバー率(LTV)は2024年12月末時点で12.9%と、同社が定める通常時の上限(25%未満)を大きく下回っています。さらに、手元流動性は5.0兆円と、今後2年分の社債償還予定額(2.1兆円)を上回る水準を確保しています。


4.他の企業の社債はどうなっている?|市場の現状

最近は、金利の変動が激しく、社債発行を延期・中止する企業も増えています。そんな中でSBGのように、リスクを抱えながらも起債に成功した例は注目に値します。

また、SBGは「ホールセール債を同時に発行することで、リテール債の利率をより透明に決定できる」という工夫も見せています。この姿勢は、資本市場との信頼関係を重視している証とも言えるでしょう。


5.初心者が社債に投資する前に知っておくべきこと

SBG債のように高い利率が提示されていると、つい魅力を感じがちですが、忘れてはいけないのが「信用リスク」です。企業が破綻すれば、元本が戻ってこない可能性もあるのが社債の特徴です。

とくにSBGのような「投資会社」の場合、保有資産や投資先の価値が大きく変動するため、その影響が社債にも波及します。利率の高さだけで判断せず、財務体質や格付け動向などもチェックしましょう。

なお、SBGの債務総額はおよそ20兆円規模とも言われており、保有するアーム株の評価変動やAI投資の収益化不透明性など、注意すべきリスクも存在します。


6.:社債ってNISAでも買えるの?|制度の壁を正しく理解しよう

「社債もNISAで買えたら、非課税でおトクなのに」と思う人は少なくありません。しかし、NISA制度では社債の取り扱いに制限があります。

✅ NISAでは社債は基本的に買えない

成長投資枠でもつみたて投資枠でも、原則として国債・社債は対象外です。 ・つまり、ソフトバンクGのようなリテール債はNISA口座では購入できません。

✅ 例外的に社債が組み込まれた「株式投資信託」は対象になることも

・一部の投資信託には、社債や公社債が組み込まれているものがあります。 ・こうした商品は「株式投資信託」としてNISA対象になることがありますが、公社債投資信託(MMFなど)はNISAで買えません。

✅ ポイントまとめ

NISAは「成長資産への長期投資」を目的とした制度なので、債券のような比較的安定した商品は対象外です。社債に投資したい場合は、特定口座や一般口座での購入を検討しましょう。


おわりに|社債は企業と投資家をつなぐ“信用の架け橋”

ソフトバンクGが起債した6200億円という規模は、社債市場でもひときわ大きなインパクトを与えました。

今後も、償還対応や追加投資の資金調達のため、同社が社債を活用する場面は増えてくるかもしれません。

社債は、企業の戦略と投資家の期待が交差するダイナミックな金融商品。初心者であっても、その仕組みや背景を正しく理解すれば、投資の選択肢として有効に活用できる可能性があります。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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