寄附金控除は、国や地方公共団体などへ一定の寄附をしたときに関係する所得控除だ。ふるさと納税で名前を聞く機会が多いが、制度上は「自治体への寄附」を起点に、所得税と個人住民税の控除が関係する仕組みとして理解すると分かりやすい。
誤解しやすいのは、寄附した金額から2,000円を引いた分がそのまま現金で戻る、という話ではない点だ。所得税では、寄附金控除は原則として「所得から差し引く」所得控除として扱われる。一方、ふるさと納税では個人住民税側の控除も関係するため、所得税と住民税で仕組みを分けて見ておきたい。
会社員でも、ふるさと納税や公益法人等への寄附をした場合、年末調整だけでは控除を受けられない場面がある。とくに医療費控除などで確定申告をする年は、ワンストップ特例を申請済みのふるさと納税分も一緒に確認することが、申告漏れを避けるうえで重要になる。
寄附なら何でも対象ではない。確認したいのは「特定寄附金」かどうか
寄附金控除は、税法上、寄附金控除の対象になる「特定寄附金」を支出した場合に受けられる。日常的には寄附と呼ばれる支出でも、すべてが控除対象になるわけではない。
特定寄附金には、国や地方公共団体への寄附、一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、認定NPO法人等への寄附などが含まれる。逆に、寄附した人に特別な利益が及ぶもの、学校の入学に関係する寄附、法令に反する政治資金関連の支出などは、控除対象から外れる場合がある。
そのため、寄附をした後は、寄附先の案内や証明書で「寄附金控除の対象になる寄附か」を確認したい。ふるさと納税であれば「寄附金の受領証」や、特定事業者が発行する「寄附金控除に関する証明書」が、確定申告時の材料になる。
控除額は寄附額そのものではなく、上限と2,000円で考える
国税庁の説明では、寄附金控除の控除額は、次のいずれか低い金額から2,000円を差し引いて計算する。
- その年に支出した特定寄附金の額の合計額
- その年の総所得金額等の40%相当額
ここでいう総所得金額等は、給与収入そのものではなく、税計算上の所得区分などを踏まえた金額だ。つまり、寄附金控除は「寄附額をそのまま税金から引く」制度ではなく、所得税を計算する前の所得から一定額を差し引く仕組みになる。
ふるさと納税でよく使われる「2,000円を超える部分が控除される」という説明も、控除上限の範囲内であることが前提だ。年収、家族構成、他の所得控除、住民税額などによって上限は変わるため、自己負担が常に2,000円で固定されるとは限らない。
会社員も注意。寄附金控除は原則として確定申告で手続きする
給与所得者にとって分かりにくいのが、年末調整との関係だ。生命保険料控除や扶養控除などは年末調整で扱われることが多いが、寄附金控除は原則として確定申告で手続きする。
国や地方公共団体、要件を満たす団体などに寄附をして寄附金控除を受ける場合は、確定申告の対象になる。寄附金の受領証や寄附金控除に関する証明書は、寄附先、寄附日、寄附金額を確認するための重要な書類だ。
ふるさと納税には、確定申告をしない人向けの簡便な制度として、ふるさと納税ワンストップ特例制度がある。利用できるのは、確定申告が不要な給与所得者等で、ふるさと納税先が5団体以内の場合などに限られる。さらに、寄附した各自治体へ申請することが前提になる。
ワンストップ特例は、確定申告をすると無効になる点に注意が必要
ワンストップ特例で特に見落としやすいのは、同じ年分について確定申告をすると、その申請が無効になる点だ。医療費控除を受けるために確定申告をする場合や、副業収入などで申告が必要になる場合も、ワンストップ特例だけでは処理が完結しない。
この場合、ワンストップ特例を申請済みの寄附分も含めて、確定申告で寄附金控除額を計算する。ふるさと納税分を申告に入れ忘れると、所得税や個人住民税の控除に反映されないおそれがある。
ふるさと納税は、名称に「納税」とあるため税金を前払いしているように受け止められやすい。しかし制度上は、選んだ自治体への寄附をもとに、所得税と個人住民税の控除を受ける仕組みだ。返礼品の有無だけでなく、確定申告をするか、ワンストップ特例で進めるかという申告方法まで含めて整理したい。
寄附後に整理したいのは、寄附先・証明書・申告方法の3点
寄附金控除で迷いやすいのは、「寄附した」という事実と「控除を受けられる」という結果を同じものとして扱ってしまうことだ。実際には、次の点を分けて確認すると、申告時の整理がしやすい。
- 寄附先が、寄附金控除の対象になる団体や自治体に当たるか
- 寄附金の受領証や寄附金控除に関する証明書があるか
- その年分について、確定申告をするか、ワンストップ特例を使うか
- ワンストップ特例を申請した後に、医療費控除などで確定申告をする予定が生じていないか
- ふるさと納税の寄附額が、自分の控除上限の範囲内か
国税庁の確定申告特集では、マイナポータル連携により寄附金受領証明書等のデータを取得し、申告書作成時に自動入力できる場合があるとされている。使える範囲は寄附先やサービスによって異なるため、紙の証明書と電子データのどちらで管理するかも確認材料になる。
返礼品だけでなく、申告方法と控除上限も確認する
寄附金控除は、寄附をした人の税負担を計算するうえで関係する制度だが、対象になる寄附、控除額の計算、申告方法には条件がある。ふるさと納税も、返礼品の選び方だけで完結する制度ではなく、所得税、個人住民税、確定申告、ワンストップ特例がつながっている。
寄附後に整理しておきたいのは、寄附先が控除対象に当たるか、証明書を保管できているか、確定申告をする年か、ワンストップ特例を申請済みの寄附分を申告に含めているかという点だ。寄附金控除を「いくら得か」だけで見ると、控除上限や申告方法を見落としやすい。税務上どう処理されるかを押さえることで、住民税通知や確定申告の場面でも確認すべき点が見えやすくなる。
出典・参考
主な参照資料
- 国税庁 タックスアンサー No.1150「一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1150.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
- 国税庁 令和7年分確定申告特集「ふるさと納税をされた方へ」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/keisubetsu/furusato.htm

