債券の格付けは、国や企業などの発行体が利息や元本を予定どおり支払えるかを読むための手がかりになる。社債、外貨建て債券、債券ファンド、ハイイールド債券ファンドを見るとき、表面上の利回りだけでは分かりにくい信用リスクを整理するための入口だ。
債券は、株式より安定した金融商品として語られやすい。一定の利息を受け取り、満期には元本の償還を受ける仕組みが基本にあるためだ。ただし、それは発行体が約束どおり支払いを続けられる場合の話であり、信用リスクが消えるわけではない。
高い利回りが示されている債券ほど、単純に「有利」とは限らない。その利回りには、発行体の信用力、景気環境、金利、通貨、流動性など、複数のリスクが反映されている場合がある。この記事では、その中でも信用リスクをどう読むかに絞り、格付け、投資適格債、ハイイールド債の関係を整理する。
NISAや投資信託を通じて債券ファンドを持つ人にとっても、この話は遠くない。商品名に「高利回り」「ハイイールド」「毎月分配」といった言葉が入っている場合、分配金の多さだけでなく、組み入れられている債券の質も判断材料になる。
高い利回りの背景にある信用リスク
債券は、国や企業などが資金を借りるために発行する金融商品だ。投資家は利息を受け取り、満期には元本の償還を受けることが基本になる。
しかし、発行体の財務状況が悪化したり、景気が急に冷え込んだりすれば、予定どおりの利払い・元本償還に不確実性が出ることがある。この「約束どおり支払われないかもしれないリスク」が信用リスクだ。
格付けは、この信用リスクを記号で示すものだ。格付会社のMoody’s Ratingsは、格付けを発行体や債務の相対的な信用リスクに関する意見として説明している。つまり格付けは、安全性を保証するものではなく、発行体や債券の信用力を比較するための評価と考えると分かりやすい。
一般に、信用力が高いと評価される債券ほど利回りは低めになりやすい。反対に、信用リスクが高いと見られる債券は、投資家に保有してもらうために高い利回りが求められやすい。高利回りは魅力だけでなく、リスクへの補償という側面を持つ。
投資適格債と投機的格付け債はどこで分かれるのか
格付けの記号体系は、格付会社によって異なる。S&PやFitchではAAA、AA、A、BBB、BBといった表記が使われる一方、Moody’sではAaa、Aa、A、Baa、Baといった表記になる。
細かな記号をすべて覚えるよりも、まず押さえたいのは、投資適格債と投機的格付け債の境界だ。
Moody’sの体系では、Baa格までが投資適格にあたり、その中でBaa3が投資適格の下限に位置づけられる。Ba1以下は投機的格付けとして扱われる。FINRAの投資家向け解説でも、Moody’sではBaa3を下回る債券がハイイールド債に該当すると説明されている。
S&PやFitchの表記では、一般にBBB-以上が投資適格、BB+以下が投機的格付けと整理される。今回確認できたFINRAの解説でも、S&PやFitchではBBBを下回る債券がハイイールド債に該当するとされている。
この境界は、単なる呼び名の違いではない。投資適格債は信用リスクが相対的に低いと評価される債券であり、投機的格付け債は信用リスクが高めと評価される債券だ。投機的格付け債のうち、利回りの高さが前面に出るものはハイイールド債と呼ばれることが多い。また、投資不適格債の別称として「ジャンク債」という言葉が使われることもある。
「ジャンク債」という言葉は強く聞こえるが、単に危険な商品という意味だけで片づけると実態を見誤る。市場では、信用リスクが高い分、高い利回りを求める投資対象として扱われる。ただし、利回りの高さだけを切り出して理解すると、リスクとの関係が見えにくくなる。
格下げは価格やファンドにどう影響しうるのか
格付けは一度決まれば変わらないものではない。発行体の財務状況、収益力、景気環境、業界構造などが変われば、格上げや格下げが起きることがある。
格下げが起きると、その債券の信用リスクが以前より高いと評価されたことになる。市場では、債券価格の下落や利回りの上昇につながる場合がある。ただし、必ず機械的にそう動くわけではなく、すでに市場が悪化を織り込んでいるか、金利環境がどう変化しているかなどにも左右される。
運用ルールによっては、一定以上の格付けを持つ債券だけを組み入れるファンドや投資家もある。そのため、投資適格から投機的格付けへ下がる局面では、一部の投資家が保有を減らす可能性がある。こうした動きは、債券価格や債券ファンドの基準価額に影響することがある。
個人投資家にとっても、これは無関係な話ではない。債券ファンドを通じて低格付け債を保有している場合、景気悪化時に信用不安が広がると、個別銘柄だけでなく低格付け債全体が売られやすくなることがある。分散投資されていても、信用リスクそのものが消えるわけではない。
債券ファンドでは組入債券の中身も手がかりになる
個別の社債を買わなくても、投資信託やETFを通じて債券へ投資している人は多い。特に海外社債、新興国債券、ハイイールド債券に投資するファンドでは、組入債券の格付け分布がリスクを理解する手がかりになる。
同じ「債券ファンド」でも、中身は大きく異なる。投資適格債が中心のファンドもあれば、BB格やB格などのハイイールド債を多く組み入れるファンドもある。格付けなしの債券が含まれる場合もある。
目論見書や月次レポートでは、次のような情報が参考になる。
- 組入債券の格付け別比率
- 投資適格債と投機的格付け債の割合
- 格付けなし債券の有無
- 発行体の地域や業種の偏り
- 円建てか外貨建てか
- 満期までの期間や金利変動への感応度
外貨建ての商品では、信用リスクに為替リスクも重なる。円安局面では外貨建て資産の評価額が押し上げられることがある一方、円高になれば為替差損が出る可能性がある。高い利回りに見える商品ほど、信用リスク、金利リスク、為替リスクを分けて考えることが、商品性を理解する助けになる。
格付けは便利だが、保証書ではない
格付けは信用リスクを読むうえで便利な情報だが、それだけで投資判断を完結させるものではない。格付会社によって評価が異なる場合があり、発行体の状況が変われば格付けも変わる。
米国の個人投資家向けメディアKiplingerは、格付けが債券価格や利回りと関係すること、また格付会社によって評価が異なる場合があることを説明している。これは、格付けを唯一の正解として扱うのではなく、複数の情報のひとつとして使う考え方につながる。
債券を理解するうえでは、次の材料を分けて見ると整理しやすい。
- 発行体:国、企業、金融機関など、誰が返済するのか
- 格付け:信用リスクがどの程度と評価されているか
- 利回り:高い利回りがどのリスクの見返りなのか
- 満期:資金が戻るまでの期間と金利変動の影響
- 通貨:円建てか外貨建てか、為替リスクがあるか
- ファンドの組入内容:どの格付け帯の債券が多いか
特に個人向けの商品説明では、利回りや分配金が前面に出やすい。だが、あわせて見ておきたいのは「どれだけ受け取れるか」だけではなく、「なぜその利回りが提示されているのか」だ。格付けは、その背景を読むためのひとつの道具になる。
利回りの高さだけでなくリスクの中身も焦点に
債券の格付けは、金融の専門家だけが使う情報ではない。社債、外貨建て債券、債券ファンド、ハイイールド債券ファンドを理解するうえで、信用リスクを整理するための基本情報になる。
投資適格債だから損をしないわけではない。投資不適格債だからすべて避けるべきという意味でもない。重要なのは、その債券やファンドがどのようなリスクを取り、その見返りとしてどの程度の利回りを示しているのかを分けて考えることだ。
高利回りという言葉は分かりやすい。一方で、その裏側にある信用リスクは、商品名だけでは見えにくい。格付け分布、格下げリスク、発行体、満期、通貨といった材料を並べることで、債券を「安定資産」という一語ではなく、リスクとリターンの関係から読みやすくなる。
出典・参考
主な参照資料
- Moody’s Ratings「Understanding ratings」 https://www.moodys.com/web/en/us/solutions/ratings/understanding-ratings.html
- FINRA「What to Know About High-Yield Bonds」 https://www.finra.org/investors/insights/what-to-know-high-yield-bonds
- Kiplinger「What Bond Ratings Mean」 https://www.kiplinger.com/article/investing/t052-c000-s001-what-bond-ratings-mean.html

