中東原油67%減、貿易統計に表れた調達ルートの変化

中東から日本に入ってくる原油の量が、4月は前年同月より67.2%減った。減少幅の大きさも目を引くが、より重要なのは、ホルムズ海峡をめぐる通航制約が日本のエネルギー調達に数字として表れたことだ。

財務省が発表した4月の貿易統計では、日本の輸出額は10兆5073億円と前年同月比14.8%増えた。輸入額も10兆2054億円と9.7%増え、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は3019億円の黒字だった。

一見すると、輸出が伸び、貿易収支も黒字になった明るい統計に見える。ただ、その内側ではエネルギー輸入の構図が大きく変わっている。中東からの原油輸入量は384万キロリットルに落ち込み、LNG=液化天然ガスは76.1%減、ナフサを含む揮発油も79.4%減った。

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何が予想と違ったのか

今回の統計で目立つのは、輸入全体の金額が増えている一方で、中東からの主要エネルギーの輸入量が大きく減ったことだ。

背景にあるのは、イラン情勢の悪化に伴い、ホルムズ海峡が事実上封鎖されたとされる状況だ。ホルムズ海峡は中東産原油を運ぶタンカーの重要な通り道で、日本にとっても原油調達の大動脈にあたる。ここで通航が制約されると、従来の調達計画に影響が出やすくなる。

尾崎官房副長官は、主にホルムズ海峡を経由した原油輸入量の減少によるものと説明し、ホルムズ海峡を通らないルートでの調達に注力していると述べた。年を越えて原油供給を確保できるめどがついてきたとも説明しており、政府としては供給不安を抑えたい姿勢を示している。

代替調達は進んでいるが、簡単な話ではない

中東からの輸入が減る一方で、代替調達の動きも出ている。アメリカからの原油輸入量は38.8%増え、ナフサを含む揮発油は206倍に拡大した。ASEAN地域からのナフサを含む揮発油も64.3%増えた。

これは、日本が中東依存を一時的に補うため、別の国や地域からの調達を増やしていることを示している。ただし、別の地域から買えばすぐに解決するほど単純ではない。

原油や石油製品には、輸送距離、船舶の確保、品質の違い、国内の精製設備との相性、価格条件といった制約がある。特にナフサは、プラスチックや化学品の原料にもなるため、調達の遅れや価格上昇が幅広い産業に波及しやすい品目だ。

政府が「供給を確保できるめど」に触れている一方で、調達ルートの変更には時間とコストがかかる。短期的な不足を避けられたとしても、それが安定した価格で続けられるかは別の問題になる。

貿易黒字でも手放しで良いとはいえない

4月の貿易収支は3019億円の黒字だった。輸出が伸びたことはプラス材料だ。半導体などの輸出増が全体を押し上げた。

ただ、今回の黒字は、輸入の中身を見ずに評価すると見誤る可能性がある。原油などの輸入数量が大きく減ったことで、結果として収支が押し上げられた面もある。輸入が減って黒字になった場合、それは必ずしも経済の強さだけを意味しない。

むしろ今回の統計は、日本のエネルギー安全保障の脆弱さを意識させる内容だった。これまで「中東依存」や「ホルムズ海峡リスク」といった言葉で語られてきた問題が、4月の数字ではっきり見える形になった。

家計や企業にはどこから影響するのか

原油輸入の急減は、ガソリン価格だけの問題ではない。原油は精製され、ガソリン、軽油、灯油、重油になる。さらにナフサは、プラスチック、包装材、合成繊維、化学品などの原料になる。

そのため、エネルギー調達の不安は、燃料価格だけでなく、食品パッケージ、物流、製造業、住宅設備、日用品のコストにもつながる。すぐに店頭価格へ反映されるとは限らないが、調達コストが上がれば、企業収益や物価に影響する可能性がある。

LNGについては、原油に比べると調達先の分散が進んでいるとされる。それでも中東からの輸入が76.1%減った事実は、電力やガスの安定供給を考えるうえで無視しにくい。エネルギーは、家庭の支出にも企業活動にも直結するためだ。

次に見るべきなのは価格と期間

今回の統計で分かったのは、ホルムズ海峡をめぐる混乱が日本の輸入量に大きく影響したことだ。ただ、今後の焦点は、輸入量が減ったことだけではない。

まず見るべきなのは、代替調達がどの程度の価格で続くのかだ。アメリカやASEANなどからの調達が増えても、輸送コストや契約条件が重くなれば、企業や家計への負担は残る。

もう一つは、混乱がどれくらい続くのかだ。短期で収まれば備蓄や代替調達で吸収できる部分があるが、長期化すれば、価格、物流、精製、化学品供給の面で負担が広がる可能性がある。

4月の貿易統計は、単に「輸出が増えた」「黒字になった」という話ではない。中東情勢の変化が、日本のエネルギー調達、物価、企業活動にどのようにつながるのかを考える入り口になる数字だ。

原油67.2%減という大きな変化は、日本の調達ルートが変化を迫られていることを示している。今後は、供給量を確保できるかだけでなく、調達コストや物流の変化が家計、企業、政府施策にどう波及するかが焦点になる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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