ソニー決算はなぜ増収減益だったのか 映画・半導体の好調とEV中止の影響

売上高は増えたのに、最終利益は減った。ソニーグループの2025年度決算は、一見すると強さと弱さが同時に出たように見える内容だった。

ただし、数字を分けて見ると、単純に「ソニーの業績が悪化した」とは言い切れない。映画や半導体などの既存事業は売上を押し上げた一方、ソニー・ホンダモビリティのEV計画中止に伴う損失や税負担の増加などが、最終利益を下押ししたためだ。

ソニーグループ(東証プライム:6758)が2026年5月8日に発表した2025年度決算では、グループ全体の売上高が前年度比3.7%増の12兆4796億円となった。一方、最終利益は3.4%減の1兆308億円で、増収減益となった。

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何が売上を押し上げたのか

増収の主な要因は、映画事業と半導体事業だった。

映画では、前年に公開された「鬼滅の刃」の最新作や「国宝」などが記録的な興行収入となり、売上を押し上げた。ソニーは映画、音楽、ゲームといったエンターテインメント領域に強みを持つ会社であり、ヒット作品が出ると決算にも大きく反映される。

半導体事業では、スマートフォン向けなどの画像センサー需要が堅調だった。画像センサーは、スマートフォンのカメラ性能を支える重要な部品で、ソニーが世界的に強みを持つ分野の一つだ。

このため、今回の数字だけで、ソニーの稼ぐ力が急に弱まったとは言いにくい。むしろ、映画や半導体といった複数の事業が、グループ全体の売上を支えた構図だ。

それでも最終利益が減ったのはなぜか

最終利益を押し下げた要因の一つが、ソニー・ホンダモビリティをめぐる損失である。

ソニー・ホンダモビリティは、ソニーと本田技研工業(東証プライム:7267)が共同で出資する会社だ。両社は「AFEELA」ブランドで高付加価値EVを展開する計画だったが、2026年3月25日、AFEELA 1と第2弾モデルの開発・発売中止、事業方向性の見直しを発表した。

この中止に関連し、ソニーは連結決算上、ソニー・ホンダモビリティ関連の損失を計上している。共同出資会社や関連会社で発生した損益は、出資比率などに応じて親会社の決算に反映されることがある。会計上は「持分法」と呼ばれる仕組みで、共同出資先の事業見直しが、ソニー本体の利益にも影響した形だ。

加えて、税負担の増加も最終利益を下押しした要因とされる。

つまり、今回の減益は、映画や半導体などの既存事業が大きく崩れた結果というより、EV計画中止に伴う損失や税負担などが重なった結果と読める。

なぜソニーがEVに関わっていたのか

ソニーは自動車メーカーではない。それでもEVに関わったのは、車の役割が変わりつつあるという見方があったためだ。

EVは単なる移動手段ではなく、ソフトウェア、センサー、映像、音楽、ゲーム、通信と結びつく製品になりつつある。ハードとサービスが一体になった体験を提供する分野として期待されていた。

その中で、ホンダの車づくりの技術と、ソニーのセンサー、映像、音楽、ゲーム、通信技術を組み合わせれば、新しい高付加価値EVを作れるという狙いがあった。

ただし、公式発表では、ホンダの四輪電動化戦略の見直しとEV市場環境の変化により、ソニー・ホンダモビリティの事業前提が変わったことが説明されている。ソニーとホンダの計画中止は、EVそのものの将来性だけでなく、量産、販売、採算、技術提供の前提を含めた判断として見る必要がある。

増収減益をどう読めばよいのか

今回の決算で注意したいのは、「増収減益」という言葉だけでソニーの状態を判断しないことだ。

売上が伸びている以上、事業全体の需要が一気に弱まったとは言いにくい。映画、半導体、ゲーム、音楽など、ソニーの収益源は複数に分かれており、今回も既存事業の一部は堅調だった。

一方で、新規事業や成長領域への投資には、見直しや撤退のリスクがある。EVのように市場環境や提携先の戦略が変わる分野では、当初の計画通りに進まない場合、損失が決算に表れることがある。

投資家や読者にとって重要なのは、最終利益の増減だけでなく、その中身を見ることだ。どの事業が稼いだのか、どの要因が利益を押し下げたのかを分けて見ると、企業の実像はかなり変わって見える。

今年度は過去最高益を見込むが、不確実性も残る

ソニーグループは2026年度の業績予想について、売上高を前年度比1.4%減の12兆3000億円、最終利益を12.5%増の1兆1600億円と見込んでいる。最終利益は過去最高となる見通しだ。

前年度に利益を押し下げた要因の反動もあり、会社側は利益回復を想定している。ただし、先行きには不確実性もある。

十時裕樹社長CEOは、米国の事業環境について、相互関税に関するスタンスや今後の見通しの不確実性が増していると説明したうえで、前提が短期間で変わる可能性を踏まえ、適応力を高める必要があるとの考えを示した。

ソニーの決算は、エンタメと半導体で稼ぐ力を示す一方、新しい成長領域を選ぶ難しさも映している。増収減益という言葉の裏側には、既存事業の強さと、次の成長を探る企業の試行錯誤が同時にある。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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