ホルムズ海峡封鎖で日本車販売減 物流停滞が示す中東リスク

イランをめぐる緊張が高まるなか、日本の自動車メーカー各社が公表した2026年3月の中東での新車販売台数が大きく落ち込んだ。数字だけを見ると「中東で車が売れなくなった」と受け止められやすいが、今回の焦点は需要の弱さだけではない。ホルムズ海峡をめぐる通航混乱によって、完成車を現地へ届けにくくなった供給側の問題が前面に出ている。

目次

各社の販売台数はどれだけ減ったか

主要メーカーが公表した2026年3月の中東での新車販売台数は、次のとおりである。

メーカー証券コード販売台数前年同月比
トヨタ自動車72033万3919台32.3%減
スズキ72692377台58.8%減
マツダ72612324台61.1%減
ホンダ72671288台56.4%減

トヨタ自動車、スズキ、ホンダはいずれも、イラン情勢の緊迫化とホルムズ海峡の事実上の封鎖が販売減の主な要因だと説明している。一方、マツダは中東で販売していた車種の生産終了を要因としており、同じ販売減でも背景は異なる。

日産自動車、SUBARU、三菱自動車は中東での販売台数を公表していない。

販売減の焦点は需要だけではない

新車販売台数の減少と聞くと、消費者の買い控えや景気悪化を連想しやすい。しかし今回の中東販売減では、物流の停滞が重要な要素になっている。

日本から中東へ完成車を届けるには、海上輸送が中心となる。船に積まれた車は、ペルシャ湾とオマーン湾をつなぐホルムズ海峡を通り、中東各国の港へ運ばれる。このルートで通航が滞れば、現地で車を買いたい人がいても、販売店に在庫が届きにくくなる。

そのため、今回の販売減は単純な需要不足とは言い切れない。物流停滞による供給制約が、販売実績に表れた可能性が高い。

物流専門メディアの報道では、日本関連の自動車運搬船がホルムズ海峡周辺で滞留し、最大7万台規模の車両が影響を受けている可能性があるとされる。輸出台数でも、ANNはトヨタの2026年3月の中東向け輸出台数が前年同月比46.4%減の1万7122台にとどまったと報じている。

ホルムズ海峡はエネルギーだけの問題ではない

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ海上交通路である。中東の産油国が輸出する原油やLNGの輸送ルートとして知られ、「エネルギーの要衝」として扱われることが多い。

しかし今回の販売減が示したのは、ホルムズ海峡が自動車輸送にも関わるルートだという点である。日本から中東へ向かう完成車の輸送も海峡の通航状況に左右される。通航混乱が長引けば、原油価格だけでなく、完成車輸出、現地販売、在庫、納期にも影響が広がる。

中東は日本車にとって重要な市場

中東市場は、トヨタのランドクルーザーをはじめ、大型SUVや耐久性の高い車種への需要が強い地域である。砂漠地帯での走行、長距離移動、商用利用などのニーズがあり、日本車の信頼性が評価されてきた。

販売台数の規模は世界全体から見れば一部にとどまるが、高価格帯の車種が売れやすい市場でもある。ロイターはランボルギーニについても中東での納車停止を報じており、高価格車の販売機会への影響も注目される。

ロイターは、トヨタの2026年3月の世界販売が2か月連続で減少した背景として、中東市場の落ち込みとRAV4のモデル切り替えを挙げている。中東の落ち込みは単独要因ではないが、世界販売の下押し要因の一つになったと読める。

今後の焦点は物流の正常化

今後の注目点は、単月の販売台数そのものより、物流がいつ正常化するかにある。

第一に、ホルムズ海峡周辺の通航混乱がいつ落ち着くかである。現時点で見通しは不透明で、事態が長引けば販売台数への下押し圧力が続く可能性がある。

第二に、代替ルートを使う場合のコストと納期である。迂回ルートを使えば輸送そのものは維持できる場合があるが、距離が延びれば物流費と納期への負担は増える。

第三に、メーカーが中東向け生産をどう調整するかである。すでに中東向けの輸出や生産を絞る動きも出ており、人気車種の供給計画に影響が及ぶ可能性がある。

今回の数字は、イラン情勢が原油価格だけでなく、日本車の販売台数にも波及していることを示している。中東リスクはエネルギー問題であると同時に、輸出、物流、生産計画を揺さぶる実体経済の問題でもある。自動車株を見るうえでも、販売台数だけでなく、海上輸送の正常化と生産調整の行方が重要になる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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