3月百貨店売上は3か月連続増 高額品と免税売上が支えた消費の現在地

「デパートが売れている」と聞いて、街全体の消費が一気に回復していると受け止めるなら、少し慎重に見たい。

日本百貨店協会によると、2026年3月の全国百貨店売上高は5071億円余りだった。既存店ベースでは前年同月比3.2%増となり、3か月連続で前年を上回った。数字だけ見れば、消費の底堅さを示す材料に映る。

ただし、内訳を見ると、伸びを目立って押し上げたのは時計・宝飾品などの高額品と、外国人旅行者向けの免税売上だった。百貨店売上の好調は事実だが、それを家計消費全体の力強い回復と同じ意味で読むには注意がいる。

目次

何が売れたのか

3月は春物衣料が動き、暖かい日が続いたことで前年より出足が早かったとされる。季節商品の販売が支えになったことは、今回の売上増の一因だ。

一方で、売上をとりわけ押し上げたのは高額品だった。素材で整理した関連報道によると、美術・宝飾・貴金属のカテゴリは前年同月比20.8%増となり、8か月連続でプラスを維持した。時計や宝飾品などの高単価商品は、百貨店の売上全体に与える影響が大きい。

主要10都市の売上は4.7%増で、仙台を除く9地区がプラスだった。大手百貨店でも多くの企業が前年実績を上回った。数字の並びは力強いが、広範な消費の回復なのか、高額品や訪日客需要が押し上げた結果なのかを分けて見る必要がある。

免税売上は客数減でも増えた

外国人旅行者向けの免税売上は465億円となり、前年同月比5.2%増だった。免税売上が前年を上回るのは5か月ぶりだ。

ただし、百貨店で実際に免税購入した外国人の数は45.3万人で、前年同月比12.3%減った。客数が減ったにもかかわらず売上が増えたのは、一人あたりの購買単価が約20%上昇したためだ。

背景には円安基調がある。円安が続くと、外国人旅行者にとって日本の商品は相対的に割安に見えやすい。その結果、来店した人がより高額な商品を買う、または購入額を増やす動きにつながりやすい。

今回の免税売上の回復は、百貨店で買った外国人客が増えたというより、購買単価が上がったことによる面が大きい。

インバウンドは中国一極から分散しつつある

もうひとつ注目したいのが、インバウンド需要の地域構成だ。

中国からの来店客は前年より少ない状態が続いている。一方で、台湾、韓国、東南アジアからの来店客が増え、中国からの落ち込みを一部補っている。

日本政府観光局(JNTO)によると、2026年3月の訪日外客数は361万8900人で、前年同月比3.5%増だった。3月としては過去最高を更新した。伸びを担った地域には、韓国、台湾、ベトナム、マレーシア、米国、英国などが含まれる。

以前の百貨店インバウンド消費は、中国人観光客への依存度が高い傾向があった。足元では、需要が複数地域に分散しつつある。特定の国の動向に左右されにくくなる面はあるが、中国人客の弱さを完全に埋めたとまではいえない。

百貨店売上は家計消費全体とは違う

百貨店売上は個人消費を見るうえで参考になる。ただし、スーパー、コンビニ、ECとは性格が異なる。

百貨店は時計、宝飾品、ブランド品、美術品、高級衣料などの比率が高く、富裕層消費や外商顧客、インバウンド需要の影響を受けやすい。売上が伸びていても、一般家庭の消費が同じ調子で回復しているとは限らない。

「既存店ベース」という数字の見方も押さえておきたい。これは前年と比較できる同じ店舗同士で売上を比べる手法で、新規開店や閉店の影響を除いた実力比較に近い。今回の3.2%増は、その条件下でのプラスを指す。

3か月連続プラスは明るい材料だが、けん引役は高額品と、円安効果も乗った免税売上だった。春物衣料が動いたことも事実だが、百貨店統計だけで家計消費全体が力強くなったと断定するのは早い。

先行きのリスクはコストにもある

日本百貨店協会の西阪義晴専務理事は、イラン情勢の影響について、現時点で顕著な影響は見られない一方、服の素材やトレーなど、ナフサ由来の部材には相応の影響を受けるとの見方を示している。

ナフサは、原油を精製して得られる石油化学製品の原料だ。合成繊維、プラスチック、包装資材などに関係する。価格上昇が進めば、衣料品や日用品のコストに間接的な影響が及ぶ可能性がある。

現時点で百貨店売上への直接的な悪影響が確認されているわけではない。ただ、原油価格や石油化学製品の動向次第では、コスト上昇が販売価格や利益率に跳ね返るリスクは残る。

数字の裏側を見る必要がある

3月の百貨店売上が前年を上回ったのは事実だ。春物衣料、高額品、免税売上が重なり、3か月連続のプラスにつながった。

ただし、その中身は一様ではない。高額品とインバウンドが数字を押し上げた面が大きく、家計消費全体の回復と同じものとして扱うには慎重さが必要だ。

百貨店売上は、景気を読む材料のひとつになる。だからこそ、総額だけでなく、何が売れ、誰が買い、どの需要が伸びたのかを見る必要がある。今回の統計は、消費の底堅さと同時に、消費の偏りも映している。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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