アメリカとイランの2回目の対面協議をめぐり、アメリカ側は協議に向かう準備が進んでいるとの見方を示す一方、イラン国営メディアは4月21日午後の時点で「代表団は誰も出発していない」と伝えた。停戦期限が日本時間4月23日午前に迫る中、双方の情報はなお食い違っている。
何が起きているのか
アメリカとイランは4月上旬、2週間の停戦に合意した。トランプ大統領は期限内に次の合意に至らなければ停戦延長の可能性は極めて低いとの認識を示し、PBSとの電話インタビューでは「多くの爆弾が爆発し始めるだろう」と述べたと報じられている。
2回目の対面協議の舞台として浮上しているのが、仲介国パキスタンの首都イスラマバードだ。米アクシオスは、JD・バンス副大統領が現地に向かう見通しだと伝えた。ウォール・ストリート・ジャーナルは、イランが代表団を派遣すると仲介国に伝えたと報じ、ニューヨーク・タイムズは、バンス副大統領が参加する場合はイラン議会のガリバフ議長が代表団を率いる見通しだと報じた。
一方、イラン側は同じ流れを否定している。イラン国営メディアは、代表団の出発や到着に関する複数の報道はいずれも事実ではなく、現時点で誰も出発していないと伝えた。イラン当局は、今後も交渉に参加するかどうかはアメリカ側の行動と立場の変化次第だとしている。
交渉を難しくしているのは何か
交渉を難しくしている大きな要因の一つが、アメリカが続けている海上封鎖だ。トランプ大統領は、イランの港に出入りする船舶への封鎖措置について、合意に署名されるまで開放しない考えを示したと伝えられている。
アメリカ中央軍は4月20日時点で、イランの港に出入りしようとした船舶27隻を引き返させたと明らかにした。交渉の場をつくるための圧力だというのがアメリカ側の発想だが、イラン側から見れば、圧力を受けたまま協議に入れと言われている構図になる。
ガリバフ議長はSNSへの投稿で「脅しのもとでの協議は受け入れない。戦場で新たなカードを切る準備をしてきた」と主張した。イラン側は全面的に交渉を閉ざしたわけではないが、少なくとも現時点では、アメリカ側の出方が変わらない限り参加しないという姿勢を維持している。
協議が実現する可能性はあるのか
現時点で並んでいるのは、「協議は近い」という米側報道と、「代表団はまだ出発していない」というイラン側報道だ。焦点は合意内容の細部より前に、まずイラン代表団が本当にイスラマバードへ向かうのかにある。
仲介国パキスタンは働きかけを強めている。パキスタンのダール外相とイランのアラグチ外相は19日と20日に2日連続で電話会談を行った。エジプトやトルコも参加を促しているとされ、地域国には戦闘拡大を避けたい思惑があるとみられる。
ただ、トランプ大統領は停戦延長に消極的な姿勢を崩していない。イラン側も、海上封鎖やアメリカの対応が交渉参加の判断材料になると繰り返している。双方が最後の駆け引きを続けている段階で、期限まで予断を許さない状況だ。
日本にとっても遠い話ではない
この問題が日本にとっても無関係ではない理由は、ホルムズ海峡を通るエネルギー輸送にある。IEAによると、世界の海上石油貿易の約25%、世界のLNG貿易の約19%がこの海域を通過する。とくにアジア向けの比率が高い。
日本は原油輸入の90%以上を中東に依存している。ホルムズ海峡をめぐる緊張が高まれば、原油価格だけでなく、輸送コストや海運保険料にも波及しうる。製造業の原材料費や電力コストを通じて、家計への影響につながる可能性もある。
このニュースは、単なる外交日程の話ではない。停戦の行方がエネルギー価格や物流コストにどう波及するかという視点で読む必要がある。
今後何を見ればよいのか
第一に確認すべきなのは、イランの代表団が実際にイスラマバードへ出発したかどうかだ。現時点ではイラン側が出発を否定しているため、この一点が協議実現の最初の分岐点になる。
第二に見るべきなのは、アメリカが海上封鎖の扱いや対イラン姿勢をどこまで修正するかだ。たとえ部分的でも柔軟性を示せば、イラン側の参加判断が変わる可能性がある。
停戦か再拡大かを分けるのは、形式的な会談発表よりも、代表団の実際の動きとアメリカ側の対応だ。期限が迫る中で、そこに最も大きな注目が集まっている。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

