2025年度の東京23区の新築マンション平均価格は1億3784万円となり、前年度比18.5%上昇して過去最高を更新した。同じ年度の首都圏の発売戸数は2万1659戸で、1973年度以降で最少だった。価格が上がる一方で、供給は細る。2025年度の市場は、その二つが同時に進んだ1年だった。
ここで注意したいのは、「売れた数」が過去最少だったわけではないことだ。不動産経済研究所が4月20日に公表したのは、首都圏で新たに発売された戸数である。売れ行きの勢いをそのまま示す数字ではないが、市場に出る新築マンションそのものが減っていることは確かだ。
発売戸数は過去最少、平均価格は過去最高

不動産経済研究所によると、2025年度の首都圏新築分譲マンション市場は、発売戸数が前年度比2.6%減の2万1659戸だった。4年連続の減少で、1973年度以降では最少となる。エリア別では東京23区が7708戸で、首都圏全体の35.6%を占めた。出典:NHK記事
一方、首都圏全体の平均価格は9383万円で、前年度比15.3%上昇した。東京23区は1億3784万円と、3年度連続で1億円台を維持しながら、上昇率も18.5%に達した。東京都下は6823万円、神奈川県は7481万円、埼玉県は6306万円、千葉県は6828万円で、全エリアで平均価格と平方メートル単価がそろって上がっている。
価格上昇だけを見ると市場が一段と強くなったようにも見えるが、供給戸数の減少と合わせてみると、単純な活況とは言い切れない。市場に出る物件が限られるなかで、高価格帯の供給比重が高まったことが平均価格を押し上げた側面が大きい。
中央値でも1億円を超えた
「一部の超高額物件が平均を押し上げただけではないか」という見方に対しては、別の統計もある。不動産経済研究所が2026年2月に公表した2025年暦年の集計では、東京23区の新築マンション価格の中央値は1億1380万円となり、初めて1億円を超えた。
中央値は、価格順に並べたときにちょうど真ん中に位置する値で、突出した高額物件の影響を平均値より受けにくい。今回の記事で扱う2025年度データとは対象期間が異なるものの、2025年の暦年ベースでも価格帯全体が切り上がっていたことを示す材料になる。
平均価格と中央値がそろって高水準にあることから、都心部の超高額物件だけでなく、市場全体で価格上昇が進んでいるとみるのが自然だ。周辺エリアでも上昇が確認されており、千葉県の平均価格は前年度比21.8%上がった。
価格を押し上げたのは都心の高額物件と供給制約だ
では、なぜここまで価格が上がったのか。不動産経済研究所の松田忠司上席主任研究員は、2025年度は都心を中心とした人気エリアで大規模タワーマンションが供給され、その高値成約が東京23区の平均価格を大きく押し上げたと説明している。
背景には、都心部での用地取得の難しさや建設コストの高止まりもある。新築マンションは用地確保から着工、販売まで時間がかかるため、供給を急に増やしにくい。供給が限られるなかで、立地条件のよい高額物件の比重が上がれば、平均価格は上がりやすい。
ただし、ここで「需要が全面的に強いから値上がりしている」と受け取るのは早い。価格上昇は、需要の強さだけでなく、供給の絞り込みや物件構成の変化にも左右されるからだ。
契約率は低く、一本調子の過熱とは言えない
2025年度の初月契約率は62.9%で、前年度から3.9ポイント低下した。新築マンション市場では70%前後が好不調の目安とされることが多く、3年連続で70%を下回った計算になる。価格が上がっているからといって、買い手がどこまでも追い付いている状況ではない。
月次データでも、勢いの変化は見える。2026年3月の首都圏平均価格は1億413万円で、前年同月比0.7%下落し、11カ月ぶりのマイナスだった。東京23区は同月も1億5023万円で前年同月比0.6%上昇したが、2月に見られた大幅上昇からは伸びが鈍った。月ごとの振れは大きいとはいえ、高値更新がそのまま需要の強さを意味するわけではない。
住宅取得を考える層にとって重いのは、価格そのものだけではない。市場に出る新築物件の数が減っているため、比較できる選択肢が細っていることも大きい。高値と供給減が同時に進む市場では、「高いけれど豊富に選べる」状態にはなりにくい。
今後の焦点は価格よりも供給と買える層の広がりだ
松田研究員は、用地取得が年々難しくなっているなかで、大型物件の供給は限られるとみる。そのうえで、中東情勢の悪化が資材不足につながれば、着工の遅れを通じて供給減と価格上昇の要因になりうるとも指摘している。ここは現時点の主因というより、今後のリスク要因として見るべき部分だ。
同時に、価格上昇が続けば購入できる層は絞られていく。所得の伸びを上回るペースで新築マンション価格が上がり続ければ、市場の裾野は広がりにくい。今後の市場を見るうえでは、平均価格の上下だけでなく、発売戸数、契約率、中央値をあわせて追う必要がある。
2025年度の数字が示したのは、東京23区の新築マンション市場がなお高値圏にあることだけではない。供給減と高価格化が同時進行し、限られた物件に高値が集まりやすい構造が強まっていることだ。価格の最高値だけを見るより、その背後で何戸が市場に出ているのかを確かめるほうが、足元の実態に近い。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

