障害年金とは?障害基礎年金と障害厚生年金の違いをやさしく解説

障害年金というと、事故や生まれつきの障害がある人だけの制度だと思われがちだ。しかし実際には、病気やけがによって生活や仕事に大きな制約が出たときに支えとなる公的年金であり、現役世代にも関係する。

厚生労働省は、障害年金を、制度加入中の病気や事故によって生活や仕事などが制限されるようになった場合に生活を支えるための年金だと説明している。一方で、初診日、障害認定日、保険料納付要件、障害基礎年金と障害厚生年金の違いなど、制度の骨格は初めて触れる人には分かりにくい。

この記事では、誤解しやすいポイントから順に、障害年金の全体像を整理する。

目次

障害年金とは何か

障害年金は、病気やけがによって日常生活や就労に大きな制約が出たときに、生活を支えるために支給される公的年金だ。老後の生活を支える老齢年金とは役割が異なり、現役世代の所得保障としての性格を持つ。

そのため、年齢が若いから関係がない制度ではない。働いている途中で病気やけがにより長く働きにくくなった場合にも、受給の可能性が生じる。

ただし、単に体調を崩しただけで直ちに受給できる制度ではない。障害年金は、障害の状態、初診日、保険料の納付状況などの要件を満たすかどうかで判断される。

「障害者手帳がある人だけ」の制度ではない

障害年金と障害者手帳は別の制度だ。障害者手帳は福祉サービスや支援策につながるための制度であり、障害年金は公的年金制度の一つとして所得保障を行う制度である。目的も判断基準も同じではない。

そのため、手帳を持っているから必ず障害年金を受けられるわけではなく、逆に手帳がなくても障害年金の対象になりうる。受給の可否を左右するのは、手帳の有無ではなく、年金制度上の要件を満たすかどうかだ。

もう一つの誤解は、事故だけが対象だという見方だ。実際には、障害年金は病気も対象になりうる。病気やけがによって生活や仕事がどの程度制限されているかが重要になる。

障害基礎年金と障害厚生年金の違い

障害年金には、大きく分けて障害基礎年金と障害厚生年金がある。どちらが関係するかは、障害の原因となった病気やけがで初めて医師や歯科医師の診療を受けた日、つまり初診日にどの制度にいたかで決まる。

初診日が国民年金加入期間にある場合は、障害基礎年金が中心になる。障害認定日に1級または2級の障害状態に該当すれば、受給対象になりうる。

初診日が厚生年金加入中にある場合は、障害厚生年金が関係する。障害認定日に1級または2級に該当する場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が上乗せされる。3級に該当する場合は、障害厚生年金のみが対象になる。

この違いがあるため、同じ障害年金でも、初診日に国民年金側だったか厚生年金側だったかで、受け取れる給付の構造が変わる。

なお、障害基礎年金は20歳前に初診日がある場合や、60歳以上65歳未満で日本国内に住み年金制度に加入していない期間の初診日も対象になりうる。一般向けには国民年金側の制度として説明されることが多いが、例外もある。

初診日・障害認定日・保険料納付要件の基本

障害年金を理解するうえで、特に重要なのが初診日、障害認定日、保険料納付要件の3つだ。

初診日は、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指す。どの年金制度が関係するかを決める基準になるため、制度の入口になる日付と考えると分かりやすい。

障害認定日は、障害の状態を判断する基準日だ。原則として初診日から1年6か月を過ぎた日で、1年6か月より前に症状が固定した場合はその日が障害認定日になる。受給の可否は、この時点で法令上の等級に当てはまるかどうかで判断される。障害認定日に該当しなくても、その後に症状が重くなれば事後重症として請求できる場合がある。

保険料納付要件は、原則として初診日の前日に、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることだ。ただし、初診日が令和18年3月31日までで、初診日に65歳未満であれば、直近1年間に保険料の未納がなければよい特例がある。20歳前に初診日がある場合は、この納付要件は不要だ。

制度の説明で難しく見えるのは、この3つが組み合わさって判断されるからだ。まず初診日で制度の種類が決まり、障害認定日で障害の程度をみて、保険料納付要件で受給資格を確認する、という順番で捉えると分かりやすい。

1級・2級・3級・障害手当金の違い

障害年金の等級は、1級が最も重く、数字が大きくなるほど軽くなる。ただし、どの等級まで対象になるかは、障害基礎年金と障害厚生年金で異なる。

障害基礎年金は1級と2級が対象だ。3級はない。

障害厚生年金は1級、2級、3級がある。初診日が厚生年金加入中であれば、3級まで給付の対象になりうる点が、障害基礎年金との大きな違いだ。

さらに、障害厚生年金には障害手当金という一時金がある。これは、厚生年金加入中に初診日のある病気やけがが初診日から5年以内に治り、3級よりやや軽い障害が残ったときに支給される仕組みだ。年金のように継続して受け取るものではなく、一回限りの給付である。

整理すると、障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1級から3級まで、さらに一定の場合には障害手当金があるという構造になる。

年金額の考え方

障害年金の金額は一律ではなく、制度の種類と等級で決まり方が違う。

障害基礎年金は、等級ごとに定められた年金額がベースになる。1級は2級より高く、子がいる場合は子の加算が上乗せされる。比較的、定額に近い仕組みだ。

障害厚生年金は、報酬比例の考え方が入る。在職中の報酬や加入期間が反映されるため、同じ等級でも受給額は人によって異なる。加入期間が300月に満たない場合は300月として計算する仕組みがあり、加入期間が短い人にも一定の配慮がある。

一般向けに押さえておきたいのは、障害基礎年金は基準額中心、障害厚生年金は報酬と加入期間が反映される、という違いだ。

子の加算、配偶者加給年金額とは

障害年金では、家族構成によって受給額が変わる場合がある。

障害基礎年金には、一定の条件を満たす子がいる場合に子の加算がある。第1子、第2子と、3人目以降では加算額の考え方が異なる。

障害厚生年金では、1級または2級の受給者に、生計維持関係のある配偶者がいる場合、配偶者加給年金額が加算されることがある。実際の適用には一定要件があるが、家族がいる場合には年金額が変わりうる点が重要だ。

そのため、障害年金は本人だけの制度として見るより、家族状況によって受給額が変わる仕組みもある制度として理解しておくとよい。

20歳前傷病による障害基礎年金とは

20歳前に、障害の原因となった病気やけがの初診日がある場合には、20歳前傷病による障害基礎年金が関係する。まだ年金制度の加入前であることが多いため、通常の保険料納付要件は問われない。

ここで分かりにくいのが、どの時点の障害状態で判断するかだ。日本年金機構は、障害の状態は原則として障害認定日でみるが、障害認定日が20歳前に来る場合は20歳に達した日を基準にするとしている。逆に、20歳に達した後に障害認定日が来る場合は、その障害認定日の状態で判断する。

たとえば、初診日から1年6か月を過ぎる前に20歳になるケースでは、通常どおり障害認定日の状態が基準になる。一方で、初診日がかなり早く、障害認定日がまだ20歳前に来るケースでは、20歳に達した日が基準になる。

また、20歳前傷病による障害基礎年金には所得制限がある。本人の所得が一定額を超えると、年金の全部または一部が支給停止になる点は、通常の障害基礎年金と異なる。

障害年金を理解するときに押さえておきたいこと

障害年金を理解するときは、まず障害者手帳の有無だけで決まる制度ではないことを押さえたい。病気も対象になりうる公的年金であり、現役世代にとっても関係がある。

次に重要なのは、初診日と障害認定日だ。初診日でどの制度が関係するかが決まり、障害認定日で障害の程度をみる。そこに保険料納付要件が加わって、受給の可否が判断される。

さらに、障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1級・2級・3級で、障害手当金は厚生年金側にある。この違いが分かると、制度の全体像がかなり見えやすくなる。

20歳前傷病には納付要件が不要という特別な扱いがある一方、所得制限もある。例外がある分、制度の基本だけでなく、どこが通常ルールと違うのかまで押さえておくことが大切だ。

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(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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