「国民年金」と「厚生年金」という言葉は聞いたことがあっても、ふたつの違いをうまく説明できる人は多くない。名前が似ているうえに、どちらか一方だけに加入しているのか、両方に関わるのか、イメージしにくいのも無理はない。まず「みんな共通の土台が国民年金で、その上に会社員や公務員などは厚生年金が乗る」という構造をつかむと、この制度はぐっと見通しがよくなる。この記事では、その「2階建て」の形を中心に、日本の公的年金の基礎を整理する。
公的年金が「2階建て」といわれるのはなぜか
日本の公的年金を説明するとき、よく「2階建て」という表現が使われる。これは建物にたとえた言い方で、年金の構造をシンプルに表したものだ。
- 1階部分 = 国民年金(基礎年金ともいわれる)
- 2階部分 = 厚生年金
全員に共通する土台として1階に国民年金があり、会社員や公務員などはその土台の上に厚生年金という2階部分が上乗せされる。
自営業やフリーランス、学生などは1階の国民年金が中心になる。一方、会社員や公務員は、1階と2階の両方に関わる形になる。
この構造を「どちらか一方に入るもの」と思ってしまうと混乱しやすい。「土台の上に上乗せがある」と考えると、全体像がかなり整理される。
1階の国民年金は、みんなに共通する土台
国民年金は、日本の公的年金の基礎となる部分だ。原則として、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度とされている。
よくある誤解のひとつが、「国民年金は自営業の人だけのもの」という理解だ。
確かに、自営業者やフリーランス、学生、無職の人などは国民年金が年金の中心になる。しかし、会社員や公務員も国民年金と無関係ではない。2階建てでいえば、会社員も1階部分は同じ土台に立っている。会社員の場合は後述するように、厚生年金保険の被保険者であると同時に、国民年金の第2号被保険者でもある。
国民年金は特定の職業や立場のためだけにある制度ではなく、すべての人に共通する年金の基礎だ。
2階の厚生年金は、会社員や公務員に上乗せされる
厚生年金は、会社員や公務員などに対して国民年金の上に上乗せされる年金だ。一定の加入要件を満たす会社員は、原則として勤務先を通じて厚生年金に加入する。
注意しておきたいのが、公務員の扱いだ。以前、公務員は「共済年金」という別の年金制度に加入していたが、2015年の制度改正により、現在は厚生年金に一本化されている。「公務員は別の制度」というイメージを持っている人もいるが、今は会社員と同様に厚生年金の対象になっている。
会社員や公務員が老後にもらう年金は、国民年金(1階)と厚生年金(2階)の組み合わせで成り立つ。この上乗せ分の厚生年金は、現役時代の給与や加入期間によって変わってくる。
会社員と自営業で将来の年金が違いやすいのはなぜか
「会社員と自営業では将来もらえる年金が違う」という話がある。その理由は、まさにこの2階建ての構造にある。
- 自営業・フリーランスなど:原則として国民年金(1階部分)が年金の中心
- 会社員・公務員など:国民年金(1階)に加えて、厚生年金(2階)が上乗せされる
土台だけの人と、土台に上乗せがある人とでは、年金の構造がそもそも異なる。同じ期間働いていても、その構成が違うのはこのためだ。
ただし、実際に受け取れる年金額は、加入期間や現役時代の収入、保険料の納付状況などによっても変わる。「会社員のほうが絶対に多い」という単純な話ではなく、まずは構造の違いとして理解することが大切だ。
また、第1号被保険者などには「国民年金基金」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」など、自分で上乗せを作る選択肢もある。2階部分を自分で準備する手段があることも、あわせて知っておきたい。
「厚生年金に入っていれば国民年金に入っていない」は誤解
会社員からときどき聞かれるのが、「自分は厚生年金だから、国民年金は関係ない」という認識だ。これは多くの場合、誤解になる。
2階建てのイメージを思い出してほしい。厚生年金は、国民年金という土台の上に乗る形で成り立っている。厚生年金に加入している人は、国民年金の第2号被保険者でもあり、基礎年金の部分にもつながっている。
手続きとしては「厚生年金に加入する」という一本の流れに見えても、制度の全体像としては国民年金と無関係ではない。
「厚生年金に入っているから国民年金には入っていない」ではなく、「厚生年金に入っている人は、国民年金の土台の上に厚生年金が上乗せされている」と理解するのが正確だ。
自分はどこに当てはまるのかを考えると理解しやすい
立場ごとの大まかな位置づけを整理すると、次のようになる。
| 立場 | 国民年金 | 厚生年金 |
|---|---|---|
| 自営業・フリーランス | ◯(1階が中心) | なし |
| 学生・無職 | ◯(1階が中心) | なし |
| 会社員(民間企業) | ◯(土台として) | ◯(上乗せ) |
| 公務員 | ◯(土台として) | ◯(上乗せ) |
| 一定の条件を満たす被扶養配偶者 | ◯(第3号被保険者として) | なし |
扶養される配偶者(いわゆる「第3号被保険者」)は、20歳以上60歳未満で、会社員や公務員など第2号被保険者に扶養されているなど、一定の条件を満たす場合に国民年金の仕組みに含まれる。詳しい被保険者区分については、別記事で整理する。
自分がどこに当てはまるかを意識すると、制度の全体像がかなり身近になる。
国民年金と厚生年金を理解するときのポイント
ここまでの内容をシンプルにまとめると、次のとおりだ。
- 国民年金は、すべての人に共通する土台(1階)
- 厚生年金は、会社員や公務員などに上乗せされる部分(2階)
- 自営業などは国民年金が中心、会社員・公務員は両方に関わる
- 厚生年金に入っている人も、国民年金と無関係ではない
- 公務員も現在は厚生年金に含まれる
この構造を頭に入れておくだけで、年金に関する話題がかなり理解しやすくなる。細かい計算や条件よりも、まず「2階建て」の形をイメージとして持つことが、年金理解の出発点になる。
詳しく知りたい人へ
この記事では、国民年金と厚生年金の「全体の形」を中心に説明した。さらに詳しく知りたい人向けに、関連するテーマも順次まとめている。
- 第1号・第2号・第3号被保険者の違い:自分がどの区分に当てはまるかを詳しく解説
- 国民年金・厚生年金の保険料の仕組み:どのくらい払うのか、どう決まるのか
- 保険料の免除や猶予:収入が少ない時期の選択肢
- 老齢年金・障害年金・遺族年金の違い:年金にはどんな種類があるのか
年金制度は一度に全部理解しなくても大丈夫だ。まずはこの2階建てのイメージを手がかりに、少しずつ理解を広げていくのが、遠回りに見えて実は一番確実な方法だ。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

