スーパーで売られるコメの価格が、ようやく下向き始めている。農林水産省が2026年4月3日に公表した週次データによると、3月23日から29日の全国平均価格は5キロ当たり3935円(税込み)で、前週より43円下がった。下落は7週連続だ。ただ、これをそのまま「コメが安くなった」と受け止めるのは早い。価格水準はなお高く、しかも下がっているのは主に銘柄米で、ブレンド米等はむしろ上がっている。足元では、価格修正と需給調整が同時に進んでいる。
平均価格は下がったが、高値圏は続く
農水省のPOSデータは、全国約1000店舗のスーパーの販売価格を集計したものだ。卸売価格ではなく、消費者が実際に店頭で向き合う価格に近い。
直近週の3935円は、前年同期より271円安い。1月以降は下落基調が続き、3月第2週には4000円の大台も下回った。それでも、2025年秋以降に続いてきた高値圏から完全に抜けたとは言いにくい。今回の値下がりは、急騰局面の反動で価格が少しずつ修正されている過程とみるのが自然だ。
下がったのは「銘柄米」、ブレンド米等は逆に上昇
今回のデータで目立つのは、商品群ごとの値動きの違いだ。農水省によると、産地と品種が単一の「銘柄米」の平均販売価格は前週比83円安の4005円だった。一方で、複数産地・品種の混合やPB商品を含む「ブレンド米等」は27円高の3703円だった。
つまり、全体平均が下がった主因は銘柄米の値下がりであり、コメ全体が一様に安くなっているわけではない。この非対称な動きは、店頭で起きている価格調整がかなり選別的であることを示している。
背景としてまず押さえたいのは在庫の重さだ。農水省が3月31日に公表した資料では、2026年2月末の民間在庫量は300万玄米トンと、前年同月より95万玄米トン多かった。公表資料だけで銘柄米の値下がりとの直接の因果関係までは断定できないが、在庫が厚い局面で値下げが先行しやすい商品と、そうでない商品が分かれ始めている可能性はある。
供給は足りる見通しでも、政府は価格急落も警戒する
足元の価格を考えるうえで、もう一つ重要なのが2026年産米の供給見通しだ。3月13日の鈴木農林水産大臣会見では、1月末時点の作付意向調査をもとに、2026年産の主食用米は732万トン相当、備蓄用を含めると740万トンとなり、政府が見込む主食用需要の最大711万トンを大きく上回るとの説明があった。政府はこの時点で「供給量は十分な水準にある」との認識を示している。
需給が緩みやすい見通しのなかで、政府は4月3日に食糧法改正案を閣議決定した。改正案ではコメの「需要に応じた生産」を法律に位置付ける一方、従来の生産調整規定は削除する方向とされる。政府はこれを、かつての減反政策への逆戻りではなく、生産者が需要を見ながら自ら判断する仕組みだと説明してきた。
ただ、政策の狙いを実務で見れば、政府が気にしているのは価格上昇だけではない。供給不足は避けたいが、供給過剰で価格が崩れれば農家経営が傷む。今回の価格下落局面では、「消費者には追い風」「生産者には逆風」という単純な構図ではなく、政府が需給と価格の両方を見ながら軟着陸を探っている様子がにじむ。
見るべきは「平均価格」よりも値下がりの中身
今後の焦点は三つある。第一に、銘柄米の値下がりがブレンド米等にも広がるのか。第二に、在庫の積み上がりが今後どこまで解消するのか。第三に、2026年産の作付け判断が実際にどう着地するのかだ。
平均価格3935円だけを見ると、コメ市場は落ち着きを取り戻し始めたように見える。だが、内訳を見ると「銘柄米だけが大きく下がる」というゆがみが残っている。足元のコメ価格を読むうえで大切なのは、単に平均が上がったか下がったかではなく、どの商品群にどんな調整圧力がかかっているかを見分けることだ。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

