ガソリン190.8円で過去最高——5週連続上昇で浮かぶ中東依存と価格抑制策の課題

3月16日時点で、レギュラーガソリンの全国平均小売価格が1リットル190.8円に達した。前の週から29円の急騰で、現在の調査方法が始まった1990年8月以降で最も高い水準だ。5週連続の値上がりが続いており、「過去最高」という数字は、家計への直接的な打撃であると同時に、日本のエネルギー構造の弱さを映す数字でもある。

一方で、19日からは政府の価格抑制策(激変緩和措置)が始まり、来週以降に価格は下がり始める見通しだ。ただし、「補助金で万事解決」と単純に読むと、問題の本質を見誤る。


目次

なぜ190円を超えたのか

価格高騰の直接の原因は、イラン情勢の悪化に伴う原油価格の急騰だ。

ガソリン価格は、原油の調達コストだけで決まるわけではない。原油価格に加え、為替レート、精製コスト、輸送コスト、流通段階のマージン、そして税負担が上乗せされる。それでも今回の急騰において最大の要因は原油高だ。

ここで重要なのが日本の構造的な弱点だ。日本は原油輸入の9割超を中東に依存しており、その大半はホルムズ海峡という海峡を通って運ばれてくる。ホルムズ海峡とはペルシャ湾の出口にある幅30キロほどの要衝で、世界の原油取引量の約2割がここを通過するとされる。この海峡での航行リスクが高まると、原油の供給不安が一気に広がり、世界市場での価格が跳ね上がる。

さらに今の日本では、円安も輸入コストを押し上げている。3月18日時点でドル円は158円台で推移しており、ドル建ての原油価格が同じ水準でも、円換算では割高になる構造だ。


「過去最高」は何と比べての最高か

「現在の調査方法で過去最高」という表現には、注意が必要だ。

石油情報センターの週次小売価格調査は1990年8月以降の現行ベースで比較されている。1970年代のオイルショック期などとの単純比較ではなく、あくまで現在の調査体制が始まって以来の最高という意味だ。それでも190円台という水準が、家計や企業にとって重い負担であることに変わりはない。

ガソリン代が上がると、直接的なマイカーの給油コストだけでなく、物流コスト、農業・漁業での燃料費、さらに電気代や食品・生活用品の価格にも連鎖的に波及する。ガソリン価格は、広い意味での物価全体を動かす力を持っている。


補助金で価格は下がるのか——仕組みと課題

こうした状況を受け、政府は3月19日出荷分から燃料価格の激変緩和措置を再発動した。激変緩和措置とは、原油価格の急激な上昇を和らげるため、石油元売り会社(原油を精製して各地に供給する企業)に補助金を支給し、卸価格の上昇を抑える制度だ。今回のガソリンへの補助額は1リットル当たり30.2円で、全国平均を170円程度に抑えることを目標としている。

石油情報センターは「来週のガソリン価格は値下がりする」との見方を示し、「1週間から2週間ほどかけて本格的に反映され、170円程度に抑えられていく」と説明している。

ただし、補助金が「その日から一律で店頭価格を下げる」わけではない点は重要だ。補助金は元売りの卸価格を通じて流通段階に作用するため、ガソリンスタンドが抱える在庫の回転や地域事情を経て、店頭価格への反映には時間がかかる。190円台が直ちに170円台前半へ切り替わるわけではなく、徐々に下がっていくイメージだ。

また、補助金の財源には限りがある。原油高が長引けば、補助に必要な金額は膨らみ続け、政策の持続性も問われる。IEAの協調対応に歩調を合わせ、日本も約8000万バレル規模の備蓄放出を進めているが、価格と供給の両面での綱渡りが続いていることに変わりはない。


190円台は「家計問題」だけではない

今回の価格高騰を「ガソリンが高くて家計が苦しい」という話だけで終わらせると、問題の深さを見誤る。

日本のガソリン価格がここまで急騰した根本には、中東への9割超という原油依存度と、ホルムズ海峡という一点を通る輸送ルートの脆弱さがある。世界的にエネルギーショックが起きるたびに日本が大きく揺れるのは、この構造が変わっていないからだ。

各国も減税、補助金、備蓄放出などで対応に追われている。日本も補助金と備蓄放出という政策を組み合わせて対応しているが、これらは根本的な解決策ではなく、あくまで時間を買う措置だ。


今後の焦点——170円は実現するか

来週以降の注目点は3つだ。

①補助金が予定どおり機能し、店頭価格が170円程度まで下がるか。
供給が安定していれば、1〜2週間で反映される見通しだが、一部地域や店舗ではより時間がかかる可能性もある。

②補助金だけで価格上昇を抑え切れるか。
原油高が補助額を上回るペースで続けば、目標の170円を達成できない可能性も残る。

③ホルムズ海峡の緊張が長引いた場合に再び上振れるか。
中東情勢の落ち着き次第では、補助金を継続しながらも再び価格が上昇する局面が来ることも否定できない。

190.8円という過去最高の数字は、今週の価格ニュースであると同時に、日本のエネルギー構造への問いかけでもある。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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