日産「ムラーノ」12年ぶり日本復活——「逆輸入」が変える自動車の買い方

日産自動車が、かつて日本でも人気を集めたSUV「ムラーノ」を、来年初頭から国内で再び販売すると発表した。2015年に国内販売を終了してから約12年ぶりの復活だ。

ただし、この「復活」は単純な新型車の投入ではない。アメリカで生産した車を日本に「逆輸入」するという、日本メーカーの間で広がり始めた形での再登場だ。そしてその背景には、日米間の貿易問題という、自動車の商品ニュースを超えた文脈がある。


目次

「逆輸入」とは何か

ここで言う逆輸入とは、日本メーカーがアメリカで生産した車を、日本国内に持ち込んで販売することだ。

かつての日本の自動車産業といえば、国内の工場で作った車を世界に輸出するイメージが強かった。逆輸入はその逆——「アメリカで作った日産車を日本で売る」という構図だ。

ムラーノはもともと北米向けに開発されたSUVで、現在もアメリカの工場で生産が続いている。それを日本向けに輸入して販売する、というのが今回の発表の中身だ。


なぜ今、逆輸入が可能になったのか

実は、これまで日本にはアメリカ製の車を手軽に輸入しにくい構造があった。自動車を国内で販売するには、日本の安全基準に適合しているかどうかを確認するための試験が必要だからだ。

ところが今年2月、国土交通省がこの仕組みを改正した。アメリカの安全基準を満たし、認証を受けた乗用車については、日本独自の追加試験を省略して輸入できる制度が新たに設けられたのだ。

日産は今回、この新制度を活用してムラーノを国内に持ち込む。制度上は「何でも自由に輸入できる」わけではなく、アメリカで製造・認証された車両であること、メーカーが輸入すること、国土交通大臣の認定を受けることなど、一定の条件がある。それを満たせば、追加試験なしで日本市場への投入が可能になった。


米国の市場開放要求という背景

ではなぜ、日本政府はこうした制度を作ったのか。そこには日米間の貿易問題が絡んでいる。

日本とアメリカの間では長年、貿易上の不均衡が問題になってきた。アメリカが日本からは多くを輸入している一方、日本はアメリカから相対的に少ししか買っていない——という構図だ。自動車はその象徴的な品目で、日本の対米輸出超過の大きな部分を占めている。

こうした状況に対してアメリカ側、特にトランプ政権は不満を持ち続けており、日本側は2025年7月の日米合意の中で、アメリカ製品の受け入れ拡大に向けた対応を約束した。今回の安全基準に関する制度改正は、その合意を実行に移すための措置のひとつだ。

今回の逆輸入には、こうした日米の貿易不均衡是正という政策文脈もある。企業としては商品ラインアップの拡充という面が中心ではあるが、対米通商対応という背景と切り離せない動きでもある。


トヨタもホンダも——業界全体の動き

今回の動きは、日産だけに限らない。

トヨタ自動車はすでにアメリカ生産の3車種を、ホンダは2車種を、それぞれ今年から順次日本に導入すると発表している。日本を代表する自動車メーカーが相次いで同じ方向に動いているのは、政策的な要請に自動車業界全体で応えている構図だ。

日産のムラーノは、こうした流れの中での一手と理解すると見え方が変わる。「12年ぶりの復活」という話題性はあるが、それ以上に、通商政策に対応する業界全体の変化を示す一例でもある。


消費者が気にすべきこと

では、実際に買う側として何を知っておくべきか。

まず気になるのがハンドルの位置だ。アメリカは左ハンドル(日本でいう「右側通行」用)の車が標準のため、逆輸入車は左ハンドル仕様になる。国内テレビ報道では、今回のムラーノも左ハンドル仕様での販売が報じられており、日産の正式発表での仕様確認が待たれる。

次に価格帯だ。国内専用モデルではなく輸入車扱いになるため、価格設定がどうなるかは現時点では不明だ。

さらに、既存の国内SUVラインアップとの棲み分けも気になる点だ。日産はすでに「エクストレイル」などのSUVを国内で販売しており、ムラーノとどう位置づけが異なるのかは、発売が近づいた段階で確認が必要だろう。

これらの詳細については、来年初頭の発売に向けて順次明らかになっていくとみられる。


まとめ——「逆輸入」は自動車の買い方を変えるか

日産ムラーノの国内再投入は、12年ぶりの「復活」という受け取り方もできるし、日米貿易問題に対する対応という見方もできる。どちらも正しい。

より大きな文脈で見れば、今回を機に「日本メーカーが海外で作った車が日本で買えるようになる」という流れは、トヨタ・ホンダ・日産と続く形で定着しつつある。左ハンドル車の選択肢が広がることも含め、今後の自動車購入の選択肢に変化が生まれる可能性がある。

逆輸入制度がどこまで広がり、消費者の選択肢にどう影響するか——その答えは、来年初頭のムラーノ発売に向けた続報を待ちたい。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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