ガソリン3週連続値上がり──158円の背後にある「遅れて効く」仕組み

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給油所の価格表が、ホルムズ海峡を映している

スタンドの看板に掲示されたレギュラーガソリンの価格が、静かに上がり続けている。

石油情報センターが発表した2026年3月2日時点の全国平均は、1リットルあたり158.5円。前の週から1.4円の値上がりで、3週連続の上昇だ。

ガソリン代の変化は、家計に直接響く。1回50リットルの給油なら、3週前と比べれば数十円から百円以上の差になりうる。毎週車で通勤する人、仕事で走り回る人には、じわじわとした負担増だ。

では、なぜ今、ガソリンが上がっているのか。そしてこの先、どう動くのか。


1月中旬まで「下がっていた」のはなぜか

まず、少し前の話から始めよう。

実はガソリン価格は、2026年1月中旬ごろまで下落傾向にあった。その最大の要因は、政府の政策だ。

日本のガソリン価格には、2025年末まで「当分の間税率(暫定税率)」と呼ばれる上乗せ分が含まれていた。これは揮発油税・地方揮発油税に含まれる上乗せ部分で、1リットルあたり25.1円とされる。暫定税率は2025年12月31日に廃止され、同日から適用税率が変更された。

また、店頭価格の急変を避けるため、政府は暫定税率の廃止に先立って燃料油価格の引下げ策(元売りへの補助)を段階的に拡充し、卸価格を通じて値下げ効果が先に出るように調整してきた。補助金とは、政府が石油元売り会社に価格引下げの原資を支給し、卸価格を押し下げて最終的に店頭価格を抑える仕組みだ(この定額引下げ措置では、ガソリン向け補助は2025年12月30日で終了している)。

こうした税率変更と補助の効果に加え、卸から店頭への反映に時間差があることも重なり、下落傾向が1月中旬ごろまで見えやすかった。


転機は1月下旬──そして「原油高」が追い打ちをかけた

しかし状況は変わった。

ポイントは「政策が続いた/薄れた」というより、店頭価格が税率変更の効果を織り込み切った一方で、補助終了後の上昇圧力(卸価格の引き上げ分)が遅れて表面化してきたことだ。つまり、下押し要因が一巡したところへ、上押し要因が時間差で効き始めた。

一つには、政策の効果が薄れるタイミングだったことがある。ガソリン向けの補助金は、2025年12月30日をもって終了している(その他の油種については支給が継続されている)。つまり、下支えがなくなったところに原油高が直撃した形だ。

そして最大の追い打ちが、イラン情勢だ。緊張の高まりを受けてホルムズ海峡の航行への懸念が強まり、原油価格は上昇した。その動きがガソリンの店頭価格にも反映され始めたのが、直近3週間の値上がりだ。


ガソリン価格はどうやって決まるのか

ここで基本的な仕組みを整理しておこう。

ガソリンの小売価格は、おおざっぱに言えば「原油価格(ドル建て)×為替レート+精製・流通コスト+税金」で決まる。

原油はドルで取引されるため、円安になれば同じ量の原油を仕入れるのに多くの円が必要になる。つまり「原油高」と「円安」は、どちらもガソリン価格の押し上げ要因になる。逆に円高に振れれば、一定の緩和効果がある。

そして、このコストが店頭の値段に反映されるまでには「タイムラグ(時間差)」がある。石油会社が輸入した原油は精製されてガソリンになり、タンクローリーで各給油所に配送される。この流れの途中に卸売段階があり、元売りがすでに引き上げていた卸価格が、まだ店頭に転嫁されていない部分が残っている場合がある。


「来週はさらに上がる」──なぜか

石油情報センターは、来週のガソリン価格について、イラン情勢を背景に上昇した原油価格が反映されるため、さらに値上がりする見通しだとしている。

これはタイムラグの話だ。原油が上がっても、すぐには店頭に出ない。卸価格の引き上げ分が時間差で転嫁されてくるため、原油価格がその後落ち着いたとしても、店頭はしばらく上がり続けやすい。

報道では「これまで店頭に反映されていなかった卸価格の引き上げ分が、来週以降に転嫁される可能性」も指摘されている。つまり「今週より原油が高かったわけではない」のに、来週もガソリンが上がる、という逆説的な状況が起きうる。


上値の鍵を握るのはホルムズ海峡

では、どこまで上がるのか。

石油情報センターは「ホルムズ海峡の航行への影響が続くことになれば、原油価格は一層上昇する可能性があり、ガソリン価格への影響も避けられない」と述べている。

ホルムズ海峡は世界の海上輸送原油取引の約4分の1、世界の石油消費の約5分の1に相当する量が通る「チョークポイント(咽喉点)」だ(EIA・IEAの推計)。ここが事実上通れない状態が続けば、実際に供給が止まらなくても、「止まるかもしれない」という不安から保険料の高騰や先物買い(将来の原油を先に買っておく動き)が起き、原油価格が上昇しやすくなる。この「不安のせいで上がる部分」をリスクプレミアムと呼ぶ。

市場では、供給懸念が強い局面では原油がしばらく高止まりしやすい、という見方もある。


「政策の切れ目」と「地政学リスク」が重なった

今回のガソリン価格上昇を複合的に見ると、タイミングの重なりが際立つ。

補助金による価格下支えが終わった直後に、イラン情勢という地政学リスクが浮上した。「政策の切れ目」と「外部ショック」が重なることで、価格への上昇圧力が増幅されやすい状況になっている。

家計にとっては、ガソリン代だけの問題ではない。輸送コストが上がれば、食品や日用品の値段にも波及する。日銀が「原油高は物価上昇につながる可能性がある」と指摘する理由の一端は、こうした波及経路にある。

158.5円という数字は、地政学・政策・流通コスト・タイムラグが複雑に絡み合った結果だ。そして来週は、おそらくその数字がさらに更新される。


主な参考:NHK(2026年3月4日報道)、石油情報センター、資源エネルギー庁、EIA、IEA。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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