G20為替をめぐる日米の“再対話”──迫る加藤・ベッセント会談

主要20か国財務相・中央銀行総裁会議(G20)開催中、焦点は日米の通貨協調へと移る。4月23日、トランプ米大統領がホワイトハウスで「ドル高が外国人旅行者減少の一因」「中国の通貨は不公平に安い。日本も円安を求めてきた」と改めて批判した中、加藤勝信財務大臣は翌25日未明に米国のスコット・ベッセント財務長官と初の本格対話に臨む。

トランプ政権の圧力と「通貨目標は追求しない」という米側スタンス

トランプ大統領は昨年6月のインタビューで「強いドル、弱い円、弱い人民元はアメリカにとってとんでもない問題」と指摘。その後もSNSや記者会見で執拗に円安ドル高を批判し、関税政策と並んで為替水準を是正すべきと訴えてきた。一方、ベッセント長官は4月23日に「日本との協議で特定の通貨目標は追求しない」と明言し、為替問題はG7合意に基づく広範な協調枠組みで扱う姿勢を示している 。

補足:ただし、ベッセント財務長官は特定の通貨目標を追求しないと明言しており、米側の公式スタンスは異なる。

日本側:為替操作は否定、金利動向で「無操作」を説明

一方の日本政府・日銀は、2024年春〜夏に1ドル=160円台へ円安が進行した際、市場介入で急激な動きを抑制。加藤大臣も「通貨安を誘導する政策は一切とっておらず、為替操作はしていない」と繰り返し否定してきた 。今回の会談では、日銀が今後の利上げを通じて円高圧力がかかる局面にあることを強調し、「金利政策による市場調整であり、政府主導の介入ではない」と理解を求める構えだ。

会談の論点:「操作の有無」と「市場安定策」の協調

今回の加藤–ベッセント会談では、

  1. 為替水準問題ではなく、操作の有無が焦点
  2. 世界経済の安定化に向けた多国間協調策

の2点が中心となる見込み。米側は通貨目標を掲げない一方で「通貨当局による不当な介入は許容しない」との原則を重視。日米は2018年以降、G7やG20で「透明性ある為替運営」を確認し続けており、今回も具体的目標を置かずに協調の枠組みを再確認する形が想定されている 。

プラザ合意2.0の観測──市場に広がる“共同行動”の思惑

注目されるのは、“プラザ合意2.0”とも評される動きだ。大統領経済諮問委員会(CEA)委員長スティーブン・ミラン氏の論文では、多国間で「ドル価値調整」を協調する意義を指摘し、合意の場で複数目標(貿易赤字削減、為替安定、製造業支援)を同時達成できるとした。これを受け、一部市場参加者は1985年のプラザ合意と同様の協調介入の再来を警戒している。

補足:ただし、日本は協調介入に慎重で、G7やG20の既存枠組みでの協調再確認が現実的とされる

市場の反応と想定される影響

短期的には「行き過ぎた円安は日本の物価高を一段と押し上げ、経済に逆風をもたらす」とのとの見方がトランプ大統領のドル高是正志向と重なる面もあり、円高圧力を歓迎する声も。一方で、為替に関する共同声明や具体策が示されなければ、逆に投機的な円高ドル安の動きを誘発する恐れもある。市場は、会談後の声明文や共同声明の有無を敏感に見極めるだろう。

専門家は何を注目するか

伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは「為替の水準ではなく操作の有無を争点に据えて、日本側は『金利上昇が円高要因』として説明すべき」と提言。また「いくぶんの円高は輸入コスト低減などのメリットがある一方、急変動は企業収益や消費者心理に悪影響を及ぼす」として、協調策と市場安定策のバランスが重要になると指摘している。

NHK記事より抜粋引用


結論
G20開催中の日米為替協議は、トランプ大統領のドル高是正志向と日本の「無操作」立場のすり合わせが試金石となる。為替操作の有無をめぐる認識の隔たりを埋められるか、またプラザ合意2.0をめぐる観測が現実の協調行動につながるかが、為替市場の動向や日米経済に影響を与える可能性。今週末に発表される共同声明の文言が、最大の注目ポイントだ。

Reuters

  • 記事タイトル: Japan’s Kato to meet US Treasury Secretary Bessent on Thursday
  • 日付: 2025年4月24日
  • 報道内容/意見:
    • G20並びにIMF・世界銀行春季総会の会合を終えた加藤財務大臣が、米国のスコット・ベッセント財務長官と4月25日(木)に会談予定であると報道。
    • 会談では主に市場安定に向けた国際協調の必要性を議論するとされ、特に米国の関税措置が各国の対抗措置を招き、世界経済や為替市場の不安定化を助長している点を加藤氏が警告する見込み。
    • 為替そのものについては「具体的な議題には触れず」、まずは広範な経済・市場安定策を協議するとのスタンス。
  • リンク: Reuters

Reuters

  • 記事タイトル: US rules out setting currency targets in trade talks with Japan
  • 日付: 2025年4月23日
  • 報道内容/意見:
    • ベッセント財務長官が、日本との貿易協議において「特定の為替レート目標は追求しない」と明言。
    • 関税、非関税障壁、通貨操作、政府補助金といった広範な貿易問題が交渉の焦点であり、為替水準自体を固定的に定める意図はないと繰り返した。
    • トランプ政権の対日批判や円安是正圧力が強まる中で、当面は「G7合意の順守」をベースに議論を進める構え。
  • リンク: Reuters

Bloomberg

  • 記事タイトル: Japan’s Kato Aims to Further FX Dialogue With Bessent This Week
  • 日付: 2025年4月22日
  • 報道内容/意見:
    • 加藤大臣はワシントン訪問中にベッセント長官と「為替対話の深化」を目指すと表明。
    • これまでのバイデント政権下での為替協議を受け継ぎ、日米間の為替認識のギャップを埋めるため、引き続き率直な意見交換を行う意向。
  • リンク: ブルームバーグ

Bloomberg

  • 記事タイトル: Bessent Says ‘No Currency Targets’ Sought in Japan Talks
  • 日付: 2025年4月23日
  • 報道内容/意見:
    • ベッセント長官は日本との協議で為替目標を追求しないと再確認。
    • 代わりに「通貨操作の有無」を問題視し、日米は長年のG7合意に基づいた協調を続けるべきとの立場を示した。
  • リンク: ブルームバーグ

Kyodo News(英語版)

  • 記事タイトル: U.S. has no specific currency targets in Japan tariff talks: Bessent
  • 日付: 2025年4月24日
  • 報道内容/意見:
    • G7会合の際に加藤財務相は米国の関税政策の早期見直しを求めたと報道。
    • ベッセント長官は「日本との協議で特定の為替レートは念頭にない」と述べ、関税、非関税障壁、通貨操作の取り組みを重視していると説明。
  • リンク: english.kyodonews.net
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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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