自動車業界救済策:トランプ政権が部品関税25%免除計画

目次

1. はじめに

トランプ氏は、中国製品に課されるフェンタニル対策関税(10~20%)や鉄鋼・アルミ関税(25%)のうち、自動車部品部分を免除する案を検討していることが分かりました。正式決定ではなく「検討段階」にあり、新関税スキーム(部品免除含む)は5月3日から適用開始の見込みです。業界の強い要望を受けた部分的な緩和策として、自動車メーカーや投資家の関心を集めています。


2. 関税政策の背景

2018年以降、米国は国家安全保障を名目に中国製品や主要貿易相手国からの鉄鋼・アルミ製品に25%の関税を課してきました。これに加え、違法薬物フェンタニル対策として中国製品全般にも同率の関税が拡大され、サプライチェーンを通じた自動車部品へのコスト上昇が自動車業界に大きな負担を強いていました。

元来は化学品向けの措置でしたが、製造工程で鉄鋼・アルミや電子部品を使う自動車業界にもコスト増が波及。完成車関税25%は従来から継続中で、今回の検討は「部品向け関税を一部免除」するものです。

特に自動車部品は、完成車価格にも直結するため、GMやトヨタなど主要メーカーをはじめ、業界団体からは関税の導入中止や免除を求める声が相次いでいました。これらの関税は、完成車向け25%、部品向け25%ともに5月3日に発効予定で、業界側では「価格上昇や販売減少、利益圧迫が避けられない」との懸念が根強くありました。


3. FT報道のポイント

  1. ・中国からのフェンタニル関税(10~20%)および鉄鋼・アルミ関税(25%)のうち、自動車部品分の免除を検討
  2. ・完成車に課す25%関税は従来通り維持
  3. ・新スキームは5月3日から適用開始の見込み(詳細範囲は調整中)
    出典Donald Trump to exempt carmakers from some US tariffs

4. 海外大手メディアの分析

Reuters

  • ロイターは、自動車業界幹部による集中的なロビー活動が今回の決断を後押ししたと指摘。
    (Center for Automotive Research試算)によれば、2025年に業界全体で約1,080億ドルの追加コストが想定されており、部品免除が実現すれば当面のコスト改善につながる可能性があります。
    出典:Trump plans to exempt carmakers from some tariffs, FT reports

Bloomberg

  • ブルームバーグは、市場の過剰な動揺を和らげる“部分的な後退”として今回の措置を位置づけています。特にUSMCA適用車両・部品の原産地規則見直しと合わせることで、サプライチェーンの柔軟化を図る狙いです。
    出典Trump to Exempt Car Parts From Tariffs on China Imports, FT Says

U.S. News & World Report


5. 自動車業界の動き

業界団体「米国自動車製造業協会連合会」などは、「輸入部品への関税25%は市場価格を押し上げ、消費者需要を冷え込ませる」として、導入中止を要請。GM、フォード、トヨタはそれぞれ、北米生産比率を高める投資計画を再度公表しつつ、短期的には中国やアジアの部品調達網に依存せざるを得ないと説明しています。ロビー資金の増加と複数回にわたる議会・行政への陳情が、今回の免除検討を後押しした背景とみられます。
業界団体「Alliance for Automotive Innovation」は、米議会・行政に対し計3回の陳情を実施。2025年3月のロビー活動では、計2,500万ドル超の予算を投じたと報じられています。


6. 関税免除がもたらす影響

部分的な関税免除により、部品単価は10~15%低減するとする試算(Center for Automotive Research)があり、完成車の追加コスト軽減につながる可能性があります。これにより、消費者向け販売価格の安定化が期待され、販売台数への下押し圧力が一部解消される見込みです。また、自動車メーカーは中国以外のアジア拠点や北米内製化への再投資を検討し、サプライチェーン多角化を一層進める動機付けとなりそうです。


7. 今後のスケジュールと注目点

5月3日:部品免除を含む新関税スキームが適用開始予定(除外範囲は調整中)
90日間:相互関税停止期間後の追加緩和議論
夏以降:日米・EUとの貿易協議動向や報復関税の可能性にも注目

各国の反応や適用ルールの詳細が固まるまで、短期的なサプライチェーンの混乱は完全には避けられず、投資家は引き続き政策動向をウォッチする必要があります。


8. まとめ

今回の自動車部品関税免除は、米国自動車業界にとって当面のコスト負担軽減策となる一方、完成車関税25%は維持されます。メーカー各社は引き続き調達戦略の再構築を急ぎつつ、新たな貿易ルールや交渉状況を注視する必要があります。投資家は、サプライチェーン再編の進展や今後の貿易協議スケジュールを見極めることが重要です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

目次