1. 円買いシフトが鮮明に──140円突破の意味
2025年4月22日、為替市場でドル円相場が一時1ドル=140円を割り込む局面がありました。これは実に7カ月ぶりの円高水準であり、単なる一時的なドル安ではなく、投資マネーが円に流入している構造的な変化が見え始めています。
2. トランプ政権の影響とドル売り圧力の強まり
背景には、トランプ前大統領によるFRBへの圧力と関税政策の再始動があります。特に、SNS上で為替政策を「通貨操作」として批判し始めたことが、市場の不安を呼び起こしました。
加えて、米経済の先行き不安とともに、「ドルの信任揺らぎ」が投資マネーを他通貨に向かわせている点が重要です。
3. 中銀の三極構造:ECBの利下げ、FRBへの政治圧力、日銀の慎重姿勢
米国ではパウエル議長への更迭圧力が強まる一方、ECBは6会合連続の利下げを決定し、市場では6月にも追加利下げが織り込まれています。
そんな中で、日銀だけが利上げを示唆。植田総裁は「物価目標の実現を前提に政策金利の引き上げを続ける」と発言しており、金利差の縮小が意識される構図となっています。
4. 円高の裏付け:ヘッジファンドの買い越し急増
みずほ銀行によると、CFTC(米商品先物取引委員会)のデータから投機筋の円買い越しは150億ドルに達し、過去最大を更新しました。これはテクニカル的な水準を超えた「マネーフローの転換」を示す重要サインです。
5. 日米財務相会談がもたらす可能性とは
4月24日には、日米財務相会談が開催され、為替の過度な円安進行に対する協議がなされる見込みです。市場では、「為替条項」や「日銀への利上げ要求」といった圧力が議題に上るのではとの観測が浮上。
仮に米国から利上げ要求が出た場合、金融政策の独立性に波及する可能性も否定できません。
6. 今後の為替レンジは?130〜140円のシナリオ
140円突破を受けて、市場では130〜140円の新たなレンジ形成が意識され始めています。今後、米国の利下げ観測が現実味を帯びれば、130円台半ばまでの円高進行も視野に入るでしょう。
一方で、過度な円高は政府・日銀にとって輸出企業への影響も懸念されるため、一定の水準での牽制発言や介入の可能性も考慮する必要があります。
7. 投資家が注目すべき今後のイベント
- 4月24日:日米財務相会談
- 5月22日:日銀の植田総裁による地方講演(宮崎市)
- 6月:ECB次回理事会(追加利下げの有無)
- トランプ氏による選挙キャンペーン発言
為替相場は政策発言一つで激変する可能性があるだけに、金融・政治両面での“リスクイベント”への警戒が求められます。
📌 まとめ:
ドル売りから円買いへのシフトは、金利差の変化だけでなく、世界の通貨観におけるパワーバランスの変化を反映しています。為替市場は、政治と金融の読み解きが最も試される局面に入っているのかもしれません。