iPhoneはアメリカ製ではない?Appleと関税リスクの意外な関係

「iPhoneはアメリカ企業の製品なのに、なぜ関税の影響を受けるのか?」​そんな疑問を持ったことはありませんか?​本記事では、iPhoneの製造地や関税の影響について詳しく解説します。​


iPhoneの製造地:設計はアメリカ、組み立ては海外

iPhoneの設計はカリフォルニア州クパチーノにあるApple本社で行われていますが、実際の製造は主に中国とインドで行われています。​

工程 主な国・地域 企業例
設計・開発 アメリカ(カリフォルニア) Apple本社
部品製造 日本、韓国、台湾など Sony(カメラ)、Samsung(ディスプレイ)、TSMC(チップ)など
組み立て 中国、インド Foxconn、Pegatron、Wistron
出荷 世界各国 地域ごとに直送

特に組み立て工程は、中国のFoxconnやPegatron、インドのWistronなどが担当しています。​


アメリカ国内でのiPhone製造は行われていない

現時点(2025年4月)で、iPhoneの最終組み立てはアメリカ国内では行われていません。​その主な理由は以下の通りです:​

  • 熟練労働者の不足:​iPhoneの製造には数十万人規模の熟練労働者が必要であり、アメリカ国内ではそのような人材の確保が難しいとされています。​
  • 製造インフラの未整備:​中国やインドには、iPhoneの製造に必要な部品供給網や組立ラインが整備されていますが、アメリカ国内には同様のインフラが整っていません。​
  • コストの増加:​アメリカ国内での製造は、労働コストやインフラ整備の面で高額となり、iPhoneの価格が大幅に上昇する可能性があります。​

例えば、アメリカ国内でiPhoneを製造した場合、価格が最大で3倍になる可能性があると指摘されています。​


🧩 アメリカ国内での部品製造や関連投資

ただ、Appleは、アメリカ国内での製造を完全に放棄しているわけではありません。​以下のような取り組みを行っています:​

  • アメリカ国内の24の工場で、iPhoneやその他の製品に使用されるシリコンチップの製造を行っています。​
  • テキサス州ヒューストンに新たな製造施設を建設し、AppleのAI機能を支えるサーバーの製造を予定しています。​
  • アメリカ国内での先進製造技術の育成や人材開発にも投資を行っています。

日本で販売されているiPhoneはどこから来るのか?

日本で販売されているiPhoneは、主に中国やインドの工場で製造され、直接日本に輸入されています。​そのため、アメリカの関税の影響を受けることはありません。​「中国→アメリカ→日本」というルートは、関税や輸送コストの面で非効率であり、現実的ではありません。​

Appleが各地域に直送体制を敷いている理由

コスト増を避けるため、Appleは以下のような物流戦略をとっています:

  • 各地域に最適化された直送ルート
  • 関税リスクの最小化
  • 販売価格の安定化

➡️ 日本向けiPhoneは、中国・インドの工場から「直接」輸入されており、アメリカの関税リスクとは無縁です。


💬 アメリカでの消費者の声「$2,300になったら買えない」

2025年4月、トランプ前大統領が発表した最大145%の対中関税により、Apple製品の価格が急騰するとの懸念が広がりました。
iPhoneの最新モデル「iPhone 16 Pro Max」については、$1,199 → $2,150への価格上昇が報道され、一部のアメリカ人消費者からは「$2,300になったらもう買えない」という声も上がっています。

これは、関税分のコストがそのまま商品価格に転嫁された場合、スマートフォンが高級家電並みの価格帯に突入するという現実的な不安を反映しています。

💱 為替レートによる価格比較:$2,300はいくらになる?

「$2,300になったらもう買えない」というアメリカの消費者の声。
では実際、それは日本円にしてどのくらいになるのでしょうか?
為替レートによって印象は大きく変わります。

為替レート(1ドル) 日本円換算 参考表記例
133円 約305,900円 約30万6千円
135円 約310,500円 約31万円
140円 約322,000円 約32万円
150円 約345,000円

約34万5千円

🇯🇵 日本のiPhoneユーザーは関税の心配いらない?

では、日本でiPhoneを買う私たちにはどう影響するのでしょうか?

▶️ 結論から言うと:

現時点で、日本でのiPhone価格がアメリカ関税の影響を直接受ける心配はあまりありません。

その理由は以下のとおりです:

項目 内容
📦 輸送ルート 日本向けのiPhoneは、中国またはインドから直接輸入されます。アメリカを経由することは基本的にありません。
💸 関税の対象 アメリカが課す関税は「アメリカに輸入される製品」に対するものであり、日本向け製品には関係ありません
🏭 サプライ戦略 Appleはすでに各地域への直送体制を構築しており、「関税を避けるための物流設計」がなされています。

🔍 関税の影響が間接的に出る可能性は?

ただし、将来的に以下のような影響はあり得ます:

  • Apple全体の利益率が低下 → 他地域でも価格調整が行われる

  • サプライチェーン全体の再構築コストが転嫁される

  • 中国・インドからの出荷に他の貿易障害が発生した場合(例:対日制裁・輸出制限)

ですが、現状においては**「アメリカ経由だとiPhoneが30万円になる」ようなシナリオは、日本では現実的ではありません**。

但し、以下のようなリスクはあります。

🧩 iPhoneはアメリカの部品なしで作れるのか?

iPhoneは現在、中国やインドで組み立てられています。
しかし、それは「すべて現地で完結している」という意味ではありません。

実は、アメリカをはじめとした複数の国からの部品供給があってこそ、iPhoneは完成します。


📦 部品供給の実態:iPhoneは“世界の部品”の集合体

iPhoneに使われる部品のうち、アメリカ製のものも数多く存在しています。たとえば:

部品カテゴリ主な供給企業製造国・地域
メインチップ(A17 Proなど)Apple設計 / TSMC製造台湾(設計は米国)
無線通信チップQualcommアメリカ
ストレージコントローラBroadcomアメリカ
電源管理IC、RF部品Texas Instruments、Skyworksなどアメリカ
OS・ファームウェアApple(設計・開発)アメリカ

➡️ つまり、中国やインドでの“組み立て”は、アメリカなどから届いた重要部品があって初めて成立しているのです。


🚚 もしアメリカからの部品輸出が止まったら?

  • iPhoneの製造ラインに致命的な支障が出る
  • 「中国製」「インド製」と表示されていても、アメリカの技術や部品に依存しているため、完全な“脱アメリカ製造”は現実的ではない
  • トランプ政権下でこのような対中輸出制限や輸出管理強化が発動される可能性も、Appleにとっては大きなリスク

🌍 Appleはすでにリスク分散を開始している

  • チップの一部は、ベトナム、インド、日本への供給も開始
  • BroadcomやTSMCは、アメリカ国内やマレーシアにも生産ラインを拡大
  • しかし「完全な代替」には数年単位の時間と巨額の投資が必要

まとめ

iPhoneはアメリカ企業であるAppleによって設計されていますが、実際の製造は主に中国やインドで行われており、アメリカ国内での製造は行われていません。​そのため、アメリカの関税政策がAppleに大きな影響を与える可能性があります。​日本で販売されているiPhoneは、直接日本に輸入されており、アメリカの関税の影響を受けることはありません。

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この記事を書いた人

CFP®/1級ファイナンシャルプランニング技能士
公益社団法人 日本証券アナリスト協会認定
・プライマリー・プライベートバンカー
・資産形成コンサルタント
一般社団法人金融財政事情研究会認定
・NISA取引アドバイザー

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