2025年4月12日、世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスのパンデミックを教訓に、将来の感染症拡大に備えるための国際的な枠組み「パンデミック条約」の条文案について大筋で合意に達したと発表しました。この条約は、感染症の予防、備え、対応(PPR)を強化することを目的としており、来月開催予定の年次総会での正式な採択が目指されています。
🌍 パンデミック条約とは?
パンデミック条約は、感染症の予防、備え、対応(PPR)を強化するための国際的な法的文書です。2021年から協議が始まり、各国の政府代表や専門家が参加する政府間交渉会議(INB)で議論が重ねられてきました。条文案には以下のような内容が含まれています。
- 各国が包括的なパンデミック予防計画を策定すること。
- 途上国におけるワクチンや治療薬の生産能力を強化すること。
- 病原体の情報を各国間で共有する新たな枠組みを設立すること。
- 製薬会社がパンデミック時に製品の最低10%をWHOに無償提供すること。
これらの取り組みにより、世界全体での感染症対策の強化と公平な医療資源の配分が期待されています。
🇺🇸 アメリカの離脱とその影響
2025年2月、アメリカのトランプ政権は、パンデミック条約の策定協議からの離脱を表明しました。トランプ大統領は、WHOの新型コロナウイルス対応を「中国寄り」と批判し、WHOからの脱退を通告しました。この決定により、アメリカはWHOの最大の資金拠出国としての地位を放棄し、WHOの活動全体に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。
アメリカの離脱により、WHOの資金調達に大きな穴が開く可能性があります。これまでアメリカは、WHOの予算の約15%を拠出しており、その多くは感染症対策や緊急事態対応に充てられていました。アメリカの拠出金がなくなることで、WHOの活動が制限される恐れがあります。
また、アメリカの離脱は、パンデミック条約の実効性にも影響を与える可能性があります。アメリカが条約に参加しない場合、世界全体での感染症対策の統一が難しくなり、国際的な協力体制の構築に支障をきたす恐れがあります。
🗣️ 各国の反応と課題
条文案の大筋合意は大きな前進ですが、いくつかの課題も残されています。特に、条文の一部表現に関してはまだ折り合いがついておらず、今後の協議が必要とされています。また、アメリカの離脱により、他の国々の対応にも影響が及ぶ可能性があります。
WHOのテドロス事務局長は、「新型コロナの教訓をもとに同じ過ちを繰り返さないため、私たちはこの条約を必要としている。次の世代にとっても大切だ」と述べ、条約の意義を強調しています。
🧭 今後の展望
WHOは、来月予定されている年次総会での正式な採択を目指しています。しかし、条文の最終調整や各国の合意形成には引き続き時間がかかる可能性があります。特に、技術移転や財政支援の具体的な枠組みについては、今後の協議で詳細が詰められる予定です。
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