2023年4月から、雇用保険料率が引き上げられることが決まりました。この引き上げは、2022年12月19日に了承された保険料率の引き下げ終了にともなう決定であり、一般の事業の場合、現在は賃金の1.35%の保険料率が、4月からは1.55%に上昇することになります。今回の引き上げによって、給与にはどのくらいの影響があるのでしょうか。
まず、雇用保険がどのような制度なのかについて見ていきましょう。雇用保険は、「労働者の生活や雇用の安定と就職の促進」のために設けられている社会保障制度です。一般的には、1週間の所定労働時間が20時間以上で、30日以上の雇用見込みがある労働者は、原則として全員が雇用保険に加入する必要があります。パートやアルバイトの人も、要件に該当すれば加入しなければいけません。保険料は給与から天引きされ、失業した際には「失業等給付」や「育児休業給付」などが受給できます。
では、雇用保険料の算出方法について見てみましょう。雇用保険料は、賃金総額(賞与を含む)に保険料率を乗じて算出されます。保険料率の決まり方は、毎年開かれる厚生労働省の「労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)」で審議と了承が行われます。保険料率は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」による法定の原則にしたがって決定されますが、財政状況によっては、厚生労働大臣が一定の範囲で変更することも可能です。
なぜ、今回雇用保険料率が引き上げられることになったのでしょうか。現在(2023年3月時点)の雇用保険全体の保険料率は1.35%(労働者0.5%、事業主0.85%)です。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって雇用調整助成金の支給決定額が6兆円を超えたことで、雇用保険財政が一転してひっ迫してしまいました。そのため、厚生労働省は「失業等給付」にあてる保険料率を0.6%から法定率の0.8%に戻す方針を示し、2022年12月19日に開かれた「労働政策審議会」による審議と了承を経て、4月からの引き上げが決定されたのです。その結果、雇用保険全体の保険料率が1.35%から1.55%に上昇することになりました。
では、この引き上げが具体的にどのような影響を与えるのか、例として月収20万円の人を見てみましょう。2023年3月までの労働者の保険料率は0.5%のため、給与が月額20万円の人の保険料は、20万円に0.5%を乗じた1000円です。一方、2023年4月から労働者の保険料率は0.6%に変更されるため、同じ給与の人の保険料は20万円に0.6%を乗じた1200円になります。また、保険料率が0.95%の事業主の雇用保険料も1900円に上がります。
社会保険料については、知らないうちに上がっていることがあります。そのため、電気や食料品などの価格と同じように、社会保険料の動向にも普段から注目することが大切です。給与から天引きされる社会保険料には、雇用保険料以外にも健康保険料や厚生年金保険料などがありますので、定期的に確認するようにしましょう。
最後に、今回の引き上げによって、雇用保険が果たす役割がより重要になってくることは言うまでもありません。多くの方々がこの制度を利用し、安心して働ける社会の実現に向けて、私たちも一緒に取り組んでいく必要があります。